昭和19年9月20日 昨夜からの「細雪」耽読、食ひものゝ出てくるところが、たまらない。(略)
「細雪」読む了った、やっぱり、いゝものだった、香気の高い果物、チーズスーフレのやうな味。谷崎先生への感想を送るのが、むづかしいな。
9月22日 机辺で、谷崎先生へ「細雪」の読後感、恥かしいが書き送る。
日記には『細雪』上巻を寄贈されたとは明記されていないが、『苦笑風呂』所収の「文藝時評」中の「谷崎「細雪」と里見「十年」」に、「戦争中に読んだ『細雪』上巻は、戦争中唯一の本もの(代用品でない、それこそ純綿純米純コーヒー)の小説として、忘れられないものだつた」とある。
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6月28日に言及した巌谷小波と同性交接研究会の関係で出てきた「川喜田」は、川喜田半泥子(川喜田二郎の父)と思われる。集古会同人で、山口昌男『内田魯庵山脈』にも出てくる。