(略)明治大正時代にキリスト教思想を、日本の神道思想に妥協させる考え方の流れが一つあるわけですね。海老名弾正が、天御中主之神とエホバを同一視したり、ホーリネス教会の中田重治の日本人ユダヤ民族説だの、その流れの中に文学者としては宮崎湖処子、徳冨蘆花、巌本善治なんかいるわけですね。湖処子は「バイブルの神の罪悪」という本の中で、皇国即天国、天皇即天主を説いているし、蘆花は例の日子日女説、善治は「エス・キリストノ神ト称スル神ノ前ニ白ス」などというあやしげな祝詞を作文して読んでいます。
巌本善治の「あやしげな祝詞」は、例によって勝本のコレクションに属していたらしい。「女性解放」『近代文学ノート4』の中で、
私は戦前、巣鴨に移ってからの明治女学校の校舎が化け物屋敷のようなガランとした姿でまだ残っているのを見たことがある。そのころ巌本善治は神道系の新興宗教の仕事でいそがしそうだった。私の手もとにはかれの自筆のノリト(祝詞)の草稿が幾つもある。
と述べている。5月1日に紹介した太霊道に言及した柳田泉といい、同時代に生きた人の強みというのか、明治大正文学研究にこうした知識が必要なのかはともかく、研究者としての奥行きの深さを感じさせるものがある。
なお、勝本が挙げている中田の日本人ユダヤ民族説は、中田の『聖書より見たる日本』(東洋宣教会ホーリネス教会出版部、昭和8年)のことと思われるが、これは昭和7年11月下旬に淀橋教会で同名の題で行われた講演を基にしたもので、大正時代にはまだあやしげな説は唱えていなかったのではなかろうか。
(参考)磯崎嘉治「「森」の舞台・庚申塚の明治女学校 巌本善治、後半生の再評価」『日本古書通信』1981年4月号
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『エスクァイア日本版』のSF特集を見た。
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『出版ニュース』8月下旬号の「ブックガイド」に猫猫先生の『リアリズムの擁護』(新曜社)の紹介あり。
講談社創業100年記念で11月から2年間に渡る書き下ろし100冊は凄いね。赤坂憲雄、東浩紀、井上章一、佐野眞一、坪内祐三、福田和也、保阪正康、和田誠などなど。執筆予定者が100人を超えている(135人)のは、ナンダラウ。