神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

城市郎旧蔵の『発禁書と言論・出版の自由』(大阪人権歴史資料館)

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大阪人権博物館(愛称リバティ・おおさか。旧大阪人権歴史資料館)は臨時休館のまま、来年6月までに移転することになったという(←追記:5月25日~31日特別無料開館することになった)。私は特別展を見るために何度か行ったことがある。常設展は、同和問題は勿論、女人禁制、差別戒名、アイヌ問題など普段気付かない差別事象について考えさせられるもので、何度も見たいというような展示ではないが、誰もが1度は見ておくべき展示だったと思う。西光万吉の旧蔵書も展示されていて、確かローゼンベルグの『二十世紀の神話』(吹田順助訳)もあったのが印象的である。
さて、同館では平成元年4月から7月まで特別展「発禁書と言論・出版の自由」が開催された。これは見に行っていないが、図録を持っている。文庫櫂から入手したと思うが、城市郎旧蔵である。なぜ分かるからというと、城宛の図録送付への礼状が挟まっていたからである。送付一覧もあって、宮本匤四郎、西澤爽、庄司浅水八木福次郎(日本古書通信社)、和田信裕、坂本一敏、梶原正弘(浪速書林)、風神庸人、尾上政太郎、高橋啓介に発送したことが分かる。また、4月3日の京都新聞(夕刊)に載った展覧会に関する記事もあって、「発禁書ばかりを対象にした展示会はこれまでほとんど前例がなく、同館は『この機会に戦前の言論統制がどのようなものだったかを感じ取ってほしい』と呼び掛けている」とある。更に、5月13日に渡部徹京大名誉教授による講演「戦前日本の検閲制度と社会運動」が開催されるともあった。
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目次の写真を挙げておく。図録には、協力者として大阪府中之島図書館、大阪府夕陽丘図書館、国立国会図書館三省堂、部落解放研究所、城市郎、谷口修太郎、藤本済造の名が挙がっている。藤本は知る人ぞ知る発禁本のコレクターである。城と違って、発禁本に関する著作は無いが、「日本の古本屋」で検索すると『季刊銀花』7号(昭和46年秋)がヒットし、「私書箱・読者三十言集」に同姓同名の人が投稿していることが分かる。