神保町系オタオタ日記

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発禁になった久米邦武「神道は祭天の古俗」掲載の『史海』8巻ーー京都市歴史資料館では特別展「岩倉具視と米欧回覧」開催中ーー

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 昨日の京都新聞に、京都市歴史資料館で開催中の特別展「岩倉具視と米欧回覧」に関する記事(日山正紀記者)が出ていた。昨年が150周年だった岩倉使節団に焦点を当てた展覧会である。13日まで開催中(月曜・祝日休館)。私も一時期岩倉使節団に興味があったので、この展覧会は2回見に行った。久米邦武編『特命全権大使米欧回覧実記』(博聞社、明治11年10月)が展示されている。この実記は、確か倉田卓次が必読書としていたので岩波文庫版で揃えたことがある。もっとも、積ん読のまま書砦・梁山泊京都店に売ってしまった(^_^;)
 回覧実記の編者である久米の旧邸の跡地に建てられた久米美術館は、目黒駅前にある。好きな美術館の一つで、展覧会があれば東京ミュージアム弾丸ツアーに組み込んで行ったので、何十回と行っているはずである。最後に行ったのは、写真で挙げた平成30年の特別展「久米邦武と旧久米邸:『百科の人』の仕事とくらし」かな。
 久米というと、『史学会雑誌』2編23号~25号(大成館、明治24年10月~12月)掲載の「神道は祭天の古俗」が問題となって、25年3月帝国大学文科大学教授を辞めたことが知られている。正確に言うと、『史学会雑誌』掲載時には問題とされなかったが、『史海』8巻(経済雑誌社、明治25年1月)に転載されたのを機に攻撃された。その結果、両誌とも同年3月5日に発禁処分を受けている。他人の本に引用されたことが切っ掛けで10年前に発行された引用元の本まで発禁になった例を、「小谷部全一郎『日本及日本国民之起原』が発行10年後に発禁処分になった理由 - 神保町系オタオタ日記」で紹介したことがある。久米の場合は、転載誌が切っ掛けとなって初出誌も発禁になった例ということになる。
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 この発禁の『史海』は3年前だったか下鴨神社の納涼古本まつりで玉城文庫の均一台から入手している。初期の号が数冊出ていて、本号だけ購入した。ただし、発禁といっても発行から日数が経っているので残存部数が多く、古書価は高くないと思われる。
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