神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

名古屋の読書趣味の雑誌『読友』(名古屋読書協会)創刊号ーー顧問に国枝史郎や金子白夢ーー

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平成28年の秋に百万遍知恩寺の古本まつりでシルヴァン書房から入手した『読友』創刊号(名古屋読書協会、昭和7年10月)という雑誌がある。未知の書物関係雑誌で、どこの図書館にもないようだ。目次はないが、表紙の立石甫水による創刊の辞の他に、

読書漫談ーーアメリカの読書を語るーー 中村宗一(マスターオブアーツ、バチュラーオブアーツ)
女子青年と読書 神長橿(名古屋市立第一高等女学校長)
読書の人生 小林橘川(名古屋新聞副社長)
悪書は良書を駆逐す 大久保桂堂
漫画雑談 鈴木夢平(名古屋新聞社)
本会選定優良書籍 柴田義勝・四宮大佐・金子白夢・東海林茂
読友短歌 転居を歌ふ 大久保桂堂
新刊紹介
学芸消息
新作小説エア・ガール 新井由紀子・菅野祐作(画)
本会役員
編集後記

金子は「小倉時代の森鴎外とメソジスト派牧師金子白夢の交流 - 神保町系オタオタ日記」などわしも注目しているキリスト者。ここにも足跡があった。
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無償公開中の「ざっさくプラス」の簡易検索では、97件ヒット(一部重複あり)。「メエテルリンクの霊魂哲学」『開拓者』8(4),大正2年昭和4年の『都市創作』での「街頭哲学」の連載なんてのもあるようだ。昭和25年4月没で、右端の最近の分は、愛知学院大学の菅原研州先生による「金子白夢牧師の禅思想」等の論文である。
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金子は、発行所である名古屋読書協会の顧問でもあった。役員名簿を挙げておくが、名古屋の名士勢揃いの感がある。名誉会長である立石謙輔(名古屋控訴院長)が立石甫水と思われる。顧問には、国枝史郎や阪谷俊作(市立図書館長)の名もあるね。編集発行兼印刷人は今村重次郎。何者か不明だが、印刷所は読書協会印刷部(名古屋市中区西川端町)とあるので、本業は印刷屋かもしれない。「編集後記」で「書籍雑誌組合の渡邊会長を始め各役員諸氏」へ謝辞を述べ、「祝創刊」として名古屋市長・助役と共に渡邊銀一(名古屋書籍雑誌組合長)の名前も並んでいるので、同組合との太いパイプがうかがえる。ブックス・ヘリングで買った志賀英夫『戦前の詩誌・半世紀の年譜』(詩画工房、平成14年1月)には、今村は大正15年8月名古屋で創刊された『文士と詩人』の編集者とある。また、「今年最後の「たにまち月いち古書即売会」で見つけた本 - 神保町系オタオタ日記」で言及した『新文化』21号(名古屋文教協会、昭和8年6月)は原本がどこかに埋もれているが、『読友』と同時期の名古屋の雑誌で立石と金子が執筆しているという共通点があることになる。