吉岡書店で見つけた西魯人(西周)訳『性法説約』については、「吉岡書店で西魯人訳『性法説約』を」で言及したところである。最初に本書を発見した金子一郎氏の本には「宮尾」印が押されていたらしいが、実は私のにも印が押されていた。
読めなかったのだが、twitterに挙げたら蔵書印さんに「西村謙三」と御教示いただきました。ありがとうございました。Wikipediaに同名の人の経歴が出ている。文久元年生、東京帝国大学文学部哲学科卒、昭和12年没の教育者、郷土史家。ただし、卒業年が確認できないので要精査である。佐賀図書館長だったとあるが、『佐賀県立図書館六十年のあゆみ』(佐賀県立図書館、昭和48年11月)によれば、任期は大正9年10月1日から昭和4年3月31日までであった。
西村は館界ではあまり足跡は残しておらず、
・東條文規『図書館の政治学』(青弓社、平成18年1月)によると、昭和2年10月27日の佐賀図書館施行図書館デーに県下公私立図書館長会を開き、佐賀図書館長西村名で知事宛に、県下各町村立図書館の設立か、私立ならば毎年一定の図書館奨励費を図書館に交付するよう、県より奨励することを求める建議書の提出を決議した
・「県へ移管されたる佐賀図書館の十五ヶ年」『図書館雑誌』昭和4年8月の執筆
ぐらいだろうか。スペンサーの『倫理の基礎』を評論したジエー・チー・ビックスビー『道徳之危機』(日本ゆにてりあん弘道会、明治26年6月)という翻訳書を出しており、なるほど性法(自然法のこと)に関心を持っているわけだ。