神保町系オタオタ日記

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国会図書館所蔵『西哲夢物語』(明治20年)の表紙は水色だったーー磯部敦「書物を誌す」『出版史研究へのアプローチ』(出版メディアパル)からーー

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 Twitterで磯部敦先生から、『西哲夢物語』(明治20年)の国会図書館及び都立中央図書館所蔵本の表紙は水色で、茨城で作製されたらしいとの御教示をいただきました。ありがとうございます。日本出版学会関西部会編『出版史研究へのアプローチ:雑誌・書物・新聞をめぐる5章』(出版メディアパル、令和元年5月)の「第5章書物を誌す」に書いたとのことで、拝読させていただきました。宮津市教育委員会(前尾記念文庫)所蔵の桃色表紙と国会図書館所蔵の水色表紙の書影(白黒)を並べ、「表紙の飾り枠をはじめ、そこかしこに違いが確認できる」と、昨日私が言及した違いについても既に指摘されておられました。国会図書館所蔵本の表紙の色が違うとは、想定外でした。磯部先生が「便利さえのうえに安住してはいけない。(略)マイクロフィルムを流用したモノクロ画像なども要注意だ」としている通りですね。
 磯部先生が本文や「参考文献案内」で言及している国文研の青田寿美先生関係の文献は、以前に御恵投いただいている。あらためて、これらも活用させていただき勉強させていただきます。また、前掲書には、「討議のあゆみ 本書の成立まで」が掲載されている。このうち牧義之先生の分の日本出版学会関西部会企画(平成27年2月)は、参加させていただいた。ただ、講演ではなく研究会で、小部屋にロの字型の机の配置だったこともあり、非会員の私には場違いの感があった。そのため、以後はのぞかなかった。牧先生の発表やその後の討議自体は、とても面白かったことを覚えている。今後機会があれば、また参加させてもらいます。当分はオンラインだろうから、参加しやすそうだ。
参考:表紙に「禁売買」とあって、奥付のある版と無い版がある西魯人(西周)訳『性法説約』(高田義甫、明治12年)について、「佐賀図書館長西村謙三の印が押された西周訳『性法説約』 - 神保町系オタオタ日記」参照