神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

阪神百貨店夏の古書ノ市で見つけた板祐生の『杏青帖』

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梅田の阪神百貨店で明日まで夏の古書ノ市が開催中。まだ行っていない方は是非どうぞ。場所柄白っぽい綺麗な本が多いが、2年前にやや古い冊子を拾った。板祐生『杏青帖』(昭和24年9月)、非売品、8頁。矢野書房出品で500円。祐生は孔版画家で、鳥取祐生出会いの館がある。是非行きたいと思っている記念館の一つである。
廣澤虔一郎編・著『美神に心奪われてーー南部町が生んだ孔版画家・板祐生』(今井出版、平成28年2月)という本がある。著者は京大法学部卒業後山陰合同銀行に勤務し、退職後執筆活動を行っている人である。同書によれば、

祐生の長年の念願は、孔版で蔵書票をつくることであった。一つの試みとしてやってみたい、という試みに興味を抱いた九州の元満亥之助の後援と、五十名の人々の賛同を得て、昭和二十四年に「板祐生孔版蔵書票の会」ができた。
蔵書票のデザインは申し込み者の希望をできるだけ尊重して制作し、題箋の「杏青帖*1」は祐生が添えるが、張り込み帖そのものは思い思いに作成して貰うという約束があった。
(略)祐生の思いは、鉄筆を捨て、すべて切抜き技法で作り上げた蔵書票五十人集に凝縮され、『杏青帖』として完成をみたのである。

私が拾った冊子と同題の蔵書票集があったのだ。どういうものかは、ネット上の「Web謄写印刷館」中の「板祐生の世界」の「祐生研究」の稲田セツ子「板祐生ーー人とコレクション」の「10切りぬき技法の頂点「蔵書票」と「絵暦」」に写真が出ているので見られたい。
本冊子と蔵書票集の関係だが、冊子中に

添付冊子はお見かけの通り縮少[ママ]しましたが、貼込帖は適宜お作り願ふこととして、その題箋の「杏青帖」を添へました。杏青帖とは私の孔版蔵書票の名□て、杏の青さでは食べようがないといふ意[。]勉強して朱黄に熟する日を念ずる積で杏朱帖になる日をお後援によって得たいものとおもひます。

とあるので、蔵書票集に添付して送ったようだ。冊子には50人の「祐生孔版蔵蔵書票の会会員芳名」が載っているので、一部を載せておこう。

3 大阪 梅谷紫翠
4 名古屋 松岡香一路
5 大阪 芦田止水
9 尼崎 米浪庄弌 
10 和泉 小谷方明
20 京都 辻井甲三郎
22 名古屋 鈴木登三
26 松本 石曽根民郎
35 奈良県 九十九黄人
39 京都 田中緑紅
50 福岡 元満亥之助

拙ブログに出てくる趣味人の多くが会員だったようだ。50人の中には祐生自身は含まれていない。頒布された50冊の蔵書票集『杏青帖』の多くは現在はコレクターに渡っているだろうが、どれぐらい残っているだろうか。
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*1:ルビ:きょうせいちょう