俳人の水原秋櫻子は、一高入学を目指していた中央大学の予備校生時代を次のように回想している(『私の履歴書 文化人2』所収)。
神保町の三省堂の前の横丁に「お登和亭」というのがあった。そのころ評判の村井弦斎の小説「食道楽」の主人公のお登和さんという料理上手の名を店名としたのだが、カツレツとコロッケの二皿に飯がついて三十銭という値段なので、いつも満員である。ここでまた先輩に出会って受験談を聞かされるのだから、二タ月や三月はまたたく間に去って、翌年の試験がすぐ眼の前に迫って来た。
水原の年譜によれば、明治42年の話と解される。まだまだ、食道楽ブームが冷めない時期であったのだろう。
三省堂前の横丁って、どこのことだろうね(ググったら場所を書いている人がいた)。