神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

戦時下におけるアチックミューゼアムの宮本常一と岡山の郷土史家花田一重ーー須藤功『宮本常一』(ミネルヴァ書房)に寄せてーー


 須藤功『宮本常一:人間の生涯は発見の歴史であるべし』(ミネルヴァ書房、令和4年5月)が刊行された。それで、平安蚤の市で入手した常一の葉書を思い出した。岡山の郷土史家だった花田一重宛書簡群の1枚である。昭和16年11月12日付けでアチックミューゼアムの常一から、呉の精華高等女学校の花田宛である。内容は、問い合わせされた『瀬戸内海巡訪日記』の発行は昭和15年であること、自分は越後へ向かう汽車の中にいて、今後越前、大阪、山口、高知、徳島へ行くことなどが書かれている。
 須藤著102・103頁によると、常一は、昭和16年11月15日・16日に新潟民俗学会の『高志路』主催の「地方文化講習会」の講師として呼ばれ、「年中行事と祭」について話している。その後越前石徹白を経て郷里の周防大島(山口)へ。ここで開戦を知る。その後、土佐寺川、徳島祖谷山への調査に回っているので、開戦に遭遇しながらも葉書に記載した通りの調査をしたことになる。『瀬戸内海巡訪日記』は、正しくは『瀬戸内海島嶼巡訪日記』で、昭和15年にアチックミューゼアムから刊行されている。
 花田宛書簡群にはまだまだ興味深い物があるので、追々紹介していきたい。