神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

京都で発行された『いろは別法律術語解釈』第1号(明法会、明治32年)ーー境田稔信氏のツイートを見てーー

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 大分前に境田稔信氏(@pX03dDIs4dQ1G3x)の明治・大正期における辞書の発行に関するツイートを見た。並製分冊の辞書を1冊ずつ間を置いて刊行し、完結後に上製合冊本とすることが多かったというものである。私も明治期の辞書の分冊を持っているので、この際紹介しておこう。
 『いろは別法律術語解釈』第1号(明法会、明治32年12月)は、玉城文庫から500円で。同第2号(明法会、明治33年2月)は、ぶんさいから300円で購入。前者は「い之部」の「家」から「意思表示」までを収録、92頁。後者は第1号の89頁以下の差し替え、「い之部」の「一部判決」から「遺贈義務者」まで、「ろ之部」(価値ある用語なしとして省略)と「は之部」の「破産」が収録されている。89頁~104頁(第1号の差し替えと思われる)と105頁~180頁。翻訳を別とすると、初期の法律用語辞典の1冊ということになる。
 これの合冊本が、国会図書館所蔵の『法律要語解釈』(明法会、明治33年5月*1)である。タイトルが若干修正されている*2。276頁。惣郷正明朝倉治彦編『辞書解題辞典』(東京堂出版、昭和52年3月)では*3、「基本六法の法律に限定して、法律関係用語を掲げて詳述してある。本文中での参照項目は「併見スヘキ要語」として特に掲げてあり、理解しやすい法律用語辞典である」と評価されている。ただし、売れなかったようで、国会図書館所蔵本は「はの部」の「判決ノ種別」で終わっている。「いろは」分しか収録されていないので、用語辞典としてはさっぱり役に立たないものである。続刊は確認できない。
 発行所の明法会は京都市御幸町夷川上ルに所在し、発行人は十河仟彦である。京都帝国大学法科大学は明治32年創立なので、京都で発行されたのはそれと関係があるのかもしれない。
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*1:国会図書館オンラインの明治32年5月は誤り

*2:修正というより、国会図書館所蔵本には表紙がなく、タイトルには内題を採用したということか。

*3:『いろは別法律用[ママ]語解釈』で立項されている。