神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

寸葉会で『温知図書館図書目録』(温知図書館)を

250円で見つけた図書目録。と言っても冊子ではなく、縦23cm、横61cmの一枚物。温知図書館は名古屋市東区蒲焼町四丁目の東洋倶楽部内に所在。発行年の記載はないが、「温知図書館新刊図書紹介(大正四年七月)」として36冊挙げているので、同年中の発行か。新刊以外の図書は、政治・経済が17冊、法律が2冊、宗教・倫理が14冊、実業・教育が15冊、哲学・文学が9冊、戦記・小説が58冊、家庭・園芸が23冊、美術が6冊、歴史・伝記・紀行が45冊、随筆が51冊、雑部が28冊の計268冊である。この他、寄贈書目が7冊、保管書目が5点ある。保管書目は『新井白石全集』、『続々群書類従』、『新群書類従』などで「保管図書は平素書籍の取扱丁寧なる方に限り貸出を為す」とある。なお、裏面の最後に「図書貸出 温知図書館」とあるので、保管書目以外の図書は誰にでも貸出をしたと思われる。
「東洋倶楽部」とは不詳で経済団体かとも思ったが、所蔵図書の傾向が実業関係以外の物が圧倒的に多いので違うのだろう。雑部には井上円了『おばけの正体』、白井光太郎『植物妖異考』、新刊図書には田中祐吉『幽霊新論』、江見水蔭『奇人怪人』も含まれていて、選書眼のセンスの良さ(?)を感じさせる。蔵書数が300冊ほどでは今では笑っちゃうような図書館だが、大正初期の地方の図書館では公立でもこんなものかもしれない。
この温知図書館については、『近代日本図書館の歩み 地方篇』にも記載がなく、創立年など詳細は不明であった。大正4年創立だとすると大正天皇の即位記念事業として創立された数多くの図書館の一つということになるかもしれない。