神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

文庫櫂で『檸檬』第一輯(檸檬社、昭和7年11月)を

檸檬社は京都市夷川川東秋月町に所在。発行者は同住所の五十川隆三、印刷者は京都市丸太町油小路東の竹田信郎。24頁、府立総合資料館も含め、所蔵館はないようだ。
目次は、

受太刀ーー小説 堀池武夫
詩壇
一節ぎり 辻孝三郎
その朝 岸美登里
うれひ しろ・あけみ
八月の空 泉きみゑ
季節 饗庭美律子
羈旅ーー創作 葛籠花一
私室にて 葛籠花一

檸檬』の同人は、

堀池武夫
五十川隆三
饗庭美律子
庄谷外茂雄
泉公恵
辻孝三郎
中野*1邦比古
葛籠花一

『日本近代文学大事典』の人名索引では一人も見当たらない。どういう人達の集まりだろう。ただし、葛籠については『近代文学研究叢書』34(近代文化研究所、昭和46年7月)の「近代文芸年表(34)」昭和6年8月の欄によると『今日の文学』に葛籠花一「野の感情」が掲載されたようだ。『今日の文学』は、同事典によると、昭和6年1月創刊、編集発行人は加宮貴一。厚生閣書店編集長だった加宮が新人紹介を目的として発行したものという。創刊号には上林暁「結婚の贈物」が載ったようだ。
檸檬』というタイトルについては、葛籠は「私室にて」で「檸檬、レモン、此の名前を思ひついた夜の幸福、この雑誌の計画の為に三夜文字通の徹夜が続きました」と書いているだけである。考えてみると、昭和7年3月に梶井基次郎が亡くなっている。そして、梶井の「檸檬」で主人公が檸檬を買ったのは二条寺町の果物屋だが、原稿その他の宛先として挙がっている葛籠の住所は二条寺町東である。

*1:実際は「野」の異体字