神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

紐綴じの内容見本の例ーー『明治大正書画大観』(書画大観刊行会、大正7年)ーー


 『近代出版研究』第2号(近代出版研究所発行・皓星社発売、令和5年3月)には、大尾侑子「明治期における「内容見本」の出現」が掲載された。そこに『戦前版内容見本書影輯成』(書砦梁山泊、令和元年10月)が出てくる。

(略)京都の古書店梁山泊島元健作)が刊行したパンフレット『戦前版内容見本書影輯成』(『書砦』四十九号)は、一九四五年までの内容見本の書影四六〇点*1をずらりと並べており、イマジュリイ(図像学)的視点から内容見本を論じるうえで活用できそうだ。

 大尾先生の論文で言及されたので、私から島元さんに同誌を2年前献本したところ喜んでいただいた。あらためて、そのパンフレットを見ると、紐綴じの内容見本が2冊映っていることに気付く。『自力殖産副業経営の指針』(教文社)、『国華浮世絵傑作大鏡』全6輯(浮世絵版画刊行会)である。私も「京都帝国大学の学知を支えた須磨勘兵衛の内外出版印刷ー井上書店の追悼にー - 神保町系オタオタ日記」などで言及した井上書店から入手した円本全集の内容見本や島元さんからいただいた戦後の内容見本など、そこそこの量の内容見本を所蔵している。しかし、紐綴じの物は無かった。
 ところが、昨年平安蚤の市で南部堂の200円均一箱から入手できたので、今回紹介しよう。竹居明男先生が『日本古書通信』に連載した「戦前内容見本抄ーー架蔵のコレクションから」にも記載がないので、珍しそうである。冒頭で写真を挙げた『明治大正書画大観』である。最初は、内容見本とは気付かず、奥付がないので買うのを迷った。しかし、奥付が欠けているものの富岡鉄斎の題簽で「書画大観刊行会」会長以下の名簿も付いてるので買ってみた。調べた結果、内容見本と分かった次第である。内容見本なので、元から奥付は無かったことになる。

 サイズは縦37.7cm、横25.7cmで、国会図書館サーチに『明治大正書画大観』天、地、玄、黄全4巻の大きさが38cmとあるので、現物のサイズに合わせてあると思われる。大尾論文に「大正期から戦前昭和にかけて発行された内容見本は、基本的にB5サイズのパンフレットであった」とあり、サイズも珍しい物ということになる。
 内容は、前記名簿のほか、「明治大正書画大観発行趣旨」「『明治大正書画大観』の出版に就いて」「明治大正書画大観 書之部目次(いろは順)」「明治大正書画大観 画之部目次(いろは順)」に続き、明治天皇山県有朋東郷平八郎伊藤博文・森槐南・正岡子規尾崎紅葉の書の写真、狩野芳崖竹内栖鳳横山大観山元春挙・寺崎広業・富岡鉄斎の画の写真である。例えば画之部目次に挙がる123名*2から見本用に選ばれた6人の当時における高評価がうかがわれて面白い。

*1:詳しくは、「書砦・梁山泊京都店の『戰前版内容見本書影輯成』 - 神保町系オタオタ日記」参照

*2:太田喜次郎とあるのは、喜二郎の誤植