神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

柳田國男「炉辺叢書刊行趣旨」掲載の『郷土研究社図書目録』


 数ヶ月前に平安蚤の市で、田中緑紅日記と同じ出所の物という図書目録を購入。てっきり田中が主宰した郷土趣味社の図書目録と思っていた。しかし、よく見たら岡村千秋が創立した郷土研究社の図書目録(以下『図書目録』という)であった。
 本書は、柳田國男「炉辺叢書刊行趣旨」(以下「刊行趣旨」という。大正13年11月付け)と炉辺叢書20冊の解題などを収録したものである。「刊行趣旨」は、『柳田國男全集第22巻』(筑摩書房、平成22年9月)に収録された『炉辺叢書解題』(以下『解題』という)の「刊行趣旨」と同内容である。全集の解題(佐藤健二氏)によれば、刊記のない『解題』は2種類あって、大正13年11月付けの「刊行趣旨」と炉辺叢書16冊の解題などが載る物と、大正14年7月付けの「刊行趣旨」と炉辺叢書20冊の解題などが載る物である。更に、佐藤氏によれば、この両者の存在は水木直箭や谷沢永一が指摘しているが、『図書目録』の存在や特質は論じられていなかったという。そして、佐藤氏は2冊の『解題』について大正13年11月から大正14年1月までの間と大正14年7月から8月までの間に刊行、『図書目録』について昭和3年6月以降の刊行と推定している。
 国会図書館サーチで『図書目録』はヒットしないし、「日本の古本屋」の販売記録にも見当たらないので、確かに柳田の研究者にも知られていなかった貴重な冊子のようだ。