神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

三密堂書店で宮津町立宮津図書館旧蔵のボール表紙本を発見ーー明治期ボール表紙本は何冊発行されたかーー

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 いよいよ百萬遍知恩寺の古本まつりが近づいてきました。出店される京都古書研究会の皆様は、めっせや下鴨神社の古本まつりが中止になった分、知恩寺では大放出してくれることでしょう。出店者の一つである三密堂書店に偵察に行ってきました。にゃんと、特価200円コーナーにボール表紙本が。ボール表紙本を集めているわけではないが、「宮津図書館蔵書之印」が押されているので購入。『北雪美談金沢実記』(誾花堂、明治20年4月3版?)と『隠顯曽我物語』(高橋平三郎、明治20年2月)。蔵書印や蔵書票があるため、特価なのだろう。
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 宮津町立図書館は、Wikipediaによると、大正11年4月創立の図書館で、宮津市立図書館として現存し、現存する図書館としては府内では3番目に古いという。『隠顯曽我物語』には、昭和7年9月に寄贈されたことを示す蔵書票が裏表紙に貼られている。
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 その他、旧蔵者であろうか、「□村/秋庄」という印も押されていた。
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 「秋庄」印は、『北雪美談金沢実記』では逆さに押されている。
 こういう蔵書印や蔵書票は、古書価にはマイナスに作用するが、来歴を推測する楽しみがある。
 ボール表紙本は、何冊ぐらい発行されたのだろうか。今野真二『ボール表紙本と明治の日本語』(港の人、平成24年10月)には今野氏所蔵の「ボール表紙本書誌データ」(五十音順)があって、明治10年出版の『大岡名誉政談』(鶴声社本店)から26年3月出版の『鼠小僧実記』(錦耕堂)まで284冊挙げられている。このリストでは、『北雪美談金沢実記』は、「北雪美談」を角書きとして明治20年10月出版の『金沢実記』(精文堂)などを掲載。『隠顯曽我物語』は、明治19年9月出版の伊随又七版が挙がっている。CiNii Booksで「注記」に「ボール表紙」とある戦前の図書を検索すると、重複や本来のボール表紙本でないものも含まれるが、明治8年12月?出版の箕作麟祥訳『仏蘭西法律書』(文部省)から41年11月出版の小栗風葉『強き恋』(春陽堂)まで、300冊ほどヒットする。ネットで読める鈴木徳三「明治期における『ボール表紙本』の刊行」には、最初期のボール表紙本は明治5年の『国立銀行条例:附成規』(大蔵省)とあるので、実態は更に増えるわけである。
 ちりめん本の展覧会は、京都外国語大学付属図書館が開催したものを見たことがある。ボール表紙本に特化したシブい展覧会もどこかで開催してくれることを期待したい。
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