神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『柳瀬正夢全集』4巻+別巻(三人社)が無事完結

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京都の出版社三人社による『柳瀬正夢全集』の内容見本を三月書房から入手したのは、6年以上前の平成25年だった。内容見本を善行堂で見せると、これは是非うちでも取り扱いたい本だと言うので、差し上げた。その後、目の肥えた客が多い善行堂、既刊分をまとめ買いする人も出たりして、売れ行きが良かったらしい。1冊当たりの本体価格が1万5千円~1万8千円もするから個人で買うのは相当厳しいはずだが、さすが善行堂である。
別巻の内容は、
・ポスター
・補遺
・[解題]柳瀬正夢、人と作品 白井かおり
 [解説]漫画家・柳瀬正夢 片倉義夫
・(コラム)柳瀬正夢の仕事
・同時代評
・回想録
・あとがき
・著作目録(総目録)
・年譜
・<目録>同時代評
・<目録>その他関連文献(同時代)
・<目録>作品・作家論ほか(没後)
別巻の「回想録」から小牧近江「“種まく人”と柳瀬正夢」(『美術運動』49号、昭和30年6月)の一部を引用しておこう。

(略)柳瀬はばくだんが好きでした。そのばくだんで[昭和二十年]五月二十五日になくなつた。戦争の犠牲者となつて死んだのです。もしヤナセが今日生きていてくれたら、どのようなことをしてくれているでしようか。ヤナセがなしえなかつたことを年寄を含めてやりとげなければならない。ぼやぼやしていると爆弾をぶつとばすよと柳瀬が地下でいつているように思います。

谷沢永一だったか、全集が完結しても書評が出ないと嘆いていた気がするが、本全集も1巻や2巻の書評はあったが、完結後書評は出ただろうか。昨年7月に完結したので、出るなら既に出たはずだが見た覚えがない。今からでも書評や完結の報道をお願いしたいものである。私は、柳瀬については「国木田独歩と秋田雨雀 - 神保町系オタオタ日記」や「柳瀬正夢と柴田宵曲の出会い - 神保町系オタオタ日記」などで言及したことがある。前者では、昭和17年柳瀬が国木田独歩の三十五回忌に出ていたことがわかる。全集別巻の年譜に記載のない事績や未収録の作品を見つけたら、随時このブログに挙げていきたい。