神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

京都スターブックス出品の戦前版『洛味』で美術記者黒田天外の没年を特定

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先日台風で延期となった京都マルイ秋の古本市をのぞいてきたら、戦前版の『洛味』を発見。5巻2号(洛味社、昭和14年4月)。発行人は、宮崎小次郎。戦後版はよく見かけるが、戦前版はあまり見ない。目次を見たら、「栗田英彦論文が『近代京都の美術工芸』(思文閣出版)に出てくるぞ - 神保町系オタオタ日記」で言及した美術記者黒田天外が書いていて、値段も500円なので衝動買い。京都スターブックス出品。
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帰ってから、黒田執筆の「青谷訪梅」と「移居」を見ると、どちらも漢詩でややガッカリ。しかし、「洛味クラブ掲示板」に4月10日までの入会者として「黒田天外(文士)」の名が挙がっていた。そう言えば、『近代京都の美術工芸 制作・流通・鑑賞』(思文閣出版)の中尾優衣「雑誌にみる近代京都の美術工芸ーー黒田天外の『日本美術と工芸』をめぐって」で、黒田の没年を昭和13年終わりから14年前半頃と推測していたことを思い出した。洛味クラブは「誕生の産声を挙げて僅かに一ヶ月」とあるので、黒田は昭和14年3月には生存していたと思われる。少なくとも昭和13年没の可能性は排除でき、昭和14年没に限定できた。『洛味』の後続号を見れば、「ペンををさめて」(編集後記)に訃報が載っているかもしれない。それは、中尾氏に任せておこう。
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参考までに、「洛味クラブ」の発起人名簿の写真も挙げておく。池田遙村、河井寛二[ママ]郎、福田平八郎、須田国太郎といった名前がある。
なお、本号の印刷所は「からふね屋印刷所の堀尾幸太郎と白川書院の臼井喜之介 - 神保町系オタオタ日記」などで言及した「からふね屋印刷所」であった。ここにもからふね屋が登場。

近代京都の美術工芸ー制作・流通・鑑賞ー

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