神保町系オタオタ日記

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天理図書館の金子和正旧蔵『小汀文庫珍本展観入札目録』

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四天王寺春の大古本祭5日目。東京から古本猛者が押しかけてくるというので、100円均一コーナーで待機していると、追加されたらしい箱を発見。目録・図録などが入っていて、『小汀文庫稀書珍本展観入札目録』(東京古典会、昭和47年)が2冊あった。一方には書き込みがあるので、普通は書き込みの無い方を買うべきだが、今回は違った。書き込みは、赤ボールペンで落札者と落札価格を書いたものだからだ。当然、資料的価値のある方を確保。昭和47年5月に開催された小汀(おばま)利得の旧蔵書入札会の目録である。この入札は、反町茂雄『蒐集家・業界・業界人』(八木書店、昭和59年6月)によれば

小汀文庫珍書の大入札会 (略)
小汀氏は日本経済新聞の記者として成功し、戦前すでに社長の重任につき、戦後は政治・経済評論家として晩年まで、指導的な地位を占めた人ですが、古書の蒐集家としても最大の人物であります。
対象は珍書稀籍を専らにして、組織・体系を持つものではない点は、岡田・ホーレー両氏のとは別ですが、善本の数に於ては前者に勝り、後者に迫るほどの内容であります。(略)

この後、書名と落札価格が続く。2点だけ入札目録と比較すると、『古今和歌集』2帖(後京極良経筆 鎌倉初期頃写)550万円は一致する。『臨済録』(嘉暦4年刊 五山版 天下一品)は反町著が349万9千円、入札目録が349万9千9百円でほぼ一致する。反町著には落札者の記載がないが、前者が広文(広文庫と思われる)、後者が○に三(三茶書房?)である。均一台からは、入札目録のほか、『おぢばがえりのお土産絵 一枚刷り版画集』(天理図書館、平成22年10月)などを購入。
入札目録には「金子」の印が押されていて、金子という名の古書店だろうなあ、そのうち調べようと思っていた。ところが、翌日、みやこめっせの古本市であがたの森書房に出版、書誌学、古書店関係の良質な本が出ていて、これが金子和正という人の旧蔵書であった。ネットで読める「庶民が手にした印刷物」*1によれば、昭和24年から天理大学図書館に勤務、その間天理大学助教授、天理図書館貴重書部長を歴任した人であった。ちなみに、金子旧蔵書からは、私は『須原屋の百年』(須原屋、昭和51年11月)を、書物蔵氏は『書誌学月報』(青裳堂書店)揃いを購入した。大阪の古本市と京都の古本市の両方に金子旧蔵書が出たということは、大阪の市会にでもまとまって旧蔵書が出たのだろうか。

蒐書家・業界・業界人

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*1:『日本印刷学会誌』45巻4号、平成20年