南部古書会館で月の輪書林から200円。60頁の小冊子。初版は昭和9年5月発行。刊行会代表者荻原正巳の「はしがき」によると、
信濃に於ける口碑と伝説の内幾多の怪奇的伝説、鬼気身に迫る妖怪譚、更に嘗て世人を震駭せしめし犯罪実話の数々を織り込んで収むる所数十篇、いづれも興趣尽くるなき好個の読みものとして一読肌に粟を生ぜしむるに違ない。
本書こそは正に信濃に於ける伝説秘話の圧巻である。本書は昭和九年上梓以来直に売切れとなり今日に至つたものであるが、各方面の知友の御勧めに依つて再版する事になつた。
収録は、水澤山の天狗の話、一つ目鬼の話、晴明の火除柱の話、人骨をかぢる狐の話、星塚の話、好色燈台の話、お菊大明神の話など41話。
長野県立図書館が所蔵する9年版(タイトルは『怪奇伝説 信州百物語』)は127頁、17年版は104頁、北海道立図書館が所蔵する18年版も104頁、国会図書館が所蔵する21年版(発行は信濃郷土誌出版社)は100頁。筆者が入手したのは、「上製版」なので頁数が違うのか。それにしても、戦時中から戦後にかけて版を重ねているのは、売れたのだろうなあ。