神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

満鉄図書館員と内山若枝

川上初枝は若林不比等と結婚して、若林初枝となる。のち、若林と離婚又は死別して、日高輝忠と再婚。日高初枝となったはずだが、三村三郎によると日高みほと名乗っていたようである。このほか、小田秀人の戦後の回想によると、初枝は内山若枝と名乗っていた時期がある。さて、『満洲文藝年鑑昭和十三年版』所収の「満洲文藝人名録」によって、実際に内山若枝と名乗っていたことが確認できた。

同人名録に「内山若枝 大連市東公園町技術会館内「満洲婦人新聞」記者 「満洲短歌」同人」とあるのである*1。戦後、ソ連軍占領下の満洲で新星新聞の発行を計画した*2初枝だが、新聞記者の経験があったのだ。また、同年鑑昭和十四年版の同人名録には、「内山若枝(川上ハツエ) 東京淀橋区百人町三七三 文話会員」とある。「文話会」は、昭和12年6月30日に結成された満洲文話会のことで、満鉄大連図書館員で戦後国会図書館員となった青木實、満洲国立中央博物館副館長の藤山一雄、杉村勇造、上村哲彌、長谷川海太郎の弟である濬、四郎兄弟らも同人であった。青木は内山のことを知っているのではないかと思っていたが、書物蔵氏によると、平成9年に亡くなっているとのこと。残念なり。

なお、同人名録には、青木や満洲婦人新聞記者だった西村眞一郎のほか、
衛藤利夫 奉天図書館長
大谷健夫(武男) 大連図書館
菊地弘義 新京市立図書館
渋谷哲夫 奉天図書館
竹内正一 哈爾濱図書館主事
中島辰海 奉天図書館
萩澤稔 大連図書館
林一郎 大連図書館
松川幹郎 哈爾濱石頭街市立図書館
山下義行 奉天図書館
山崎末治郎 新京市立図書館長

の名前もある。松川は昭和15年11月没、萩澤は戦後富山県立図書館員。他の満鉄図書館・旧満鉄図書館の職員も戦後図書館員となった人が多いだろう。

(参考)『満洲国各民族創作選集第二巻』(創元社昭和19年3月)の作者紹介によると、

青木實 明治42年東京市生。法政大学商業学校卒業、東洋大学師範科国漢部中退。大連図書館司書を経て現在満鉄附業局愛路課宣伝係。満洲文藝家協会員、作文社主宰。

と、ここまではわかっておったのだが、元××××図書館員の誰ぞに敗れた。

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『あっちゃん』7万部を突破したらしい。男の「あっちゃん」も負けじと鋭意執筆中(らしい)。ていうか、今何を書いているのだろう。
あっちゃん 前田敦子写真集

*1:若林初枝が『満洲短歌』の同人であったことは、今月3日参照。

*2:昨年11月26日参照。