神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

小説家浜野健三郎の甘粕正彦研究

昨日言及した浜野は、小説家浜野健三郎でした。石川達三『私の周囲・生活の内外』(大和書房、1971年12月)の「後記」に、

もともと私自身はこんな本を出そうとは考えていなかったが、旧友浜野健三郎君と大和書房主とが計画して、相談に来られたので、ついその気になった。

とありました。
浜野は、小説家で『日本近代文学大事典』にも立項されているが、浜野編著の『あゝ満洲』(秋元書房、1970年)掲載の略歴によれば、

明治44年栃木県に生まる。
大正12年一家をあげて大連へ移住。大連第二中学校を経て、早稲田大学文学部に学ぶ。昭和13年から17年夏まで、天津、奉天で勤務生活を送る。
比島戦線に従軍、戦後文筆生活に入り、著書に『私版スサノオ紀』、『最後の谷』などがある。

石川の日記にあるとおり、満洲育ちであった。「芥川賞のすべてのようなもの」の「予選候補作家の群像」によると、『日本文學者』創刊号、昭和19年4月に発表した「梅白し」が第19回上期芥川賞予選候補になったようだ。
『あゝ満洲』では、甘粕正彦について若干言及していて、

その甘粕に興味を持ち出したのは、満洲のことを改めて調べはじめた数年前からである。彼の伝記を読み、関係者の話を聞く度に、私の関心は急激に彼に対して傾斜して行った。(略)しかし終戦直後の混乱の中で、自殺した甘粕正彦の葬列に多くの満人が「泣きながら」加わったという事実は何人も否定出来ないのである。そしてこの事実を原点として、私は改めて甘粕正彦の生涯を再検討して見る必要があるように思っている。

浜野は1995(平成7)年没。亡くなるまでに「再検討」の結果を発表できただろうか。

あゝ満洲

あゝ満洲