神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

高村光太郎と木村荘太の決闘に立ち会う谷崎潤一郎


明治43年11月20日の「パンの会」では、色々事件が起きている。小谷野氏の「谷崎潤一郎詳細年譜」によると、

日本橋大伝馬町の三州屋で開かれた「パンの会」の集まりに出席し、永井荷風に会う。ほかに、与謝野鉄幹蒲原有明、小山内、木下杢太郎、久保田万太郎、白秋、長田秀雄(26)、幹彦(24)、岡本一平高村光太郎ら。『白樺』からは正親町公和と里見恕s。酔った谷崎は里見に、日下の「給仕の室」が良かったと言う(里見「青春回顧」)。秀雄は入営前だったが「刺青」を褒める。木村は「河内楼のモナリザ」を高村から奪い、決闘するかもしれないと谷崎に言う。


この「決闘」だが、高村の年譜によると、

夜、日本橋大伝馬町ひょうたん新道の三州屋でパンの大会。長田秀雄、柳敬助の入営祝の幟に光太郎が黒枠を描いて物議をかもした黒枠事件がある。若太夫をめぐって木村荘太と恋争いがあり、荘太が決闘を申し込もうとしたのもこの時。結局若太夫は、遊び慣れた荘太を選び、恋は終わる。


また、高村は、高見順との対談*1で次のように発言している。

高村 (略)阿部次郎だの、和辻(哲郎)さんなんかもやつて来る。谷崎(潤一郎)さんも来る。その流れで洲崎の、あれ、何樓だつたかな、あそこへ登つた。和辻さんや阿部次郎なんかね。その時の寄せ書のはがきなんか、ぼく、持つてた。
高見 洲崎の女郎屋からですか。面白いな。
高村 あれ持つてゆすりにいくといいんだけれど。(笑聲)今持つてつたら、和辻さん、弱つちやうだろうね。(笑聲)ぼくが決闘するつていうんで、谷崎さんが木村荘八[ママ]の附添人になつてやつて来たり、ずいぶんばかばかしい時代ですよ。


高村と木村の「決闘」というのは、結局どういう形で行われたのだろう。

                                                              • -


望星』4月号は「図書館活用術!」特集だすよ。

*1:「わが生涯」『文藝』13巻1号、昭和31年1月。加筆して『高村光太郎全集第十一巻』所収。