神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

剣山ソロモン王の秘宝発掘をある男の生き甲斐にさせたトンデモ本とは⁉


 4年前の秋、星野画廊近くの神宮道を歩いていたら、ある看板にビックリ。京都写真美術館の「西田茂雄写真展 ソロモンの秘宝発掘に挑んだ男」で、会期は11月19日~24日であった。展示によれば、明治34年生まれの宮中要春(みやなか・としはる)は、昭和27年古本屋で買った本でソロモン王の秘宝を知ってから、20年の歳月をかけて発掘を続けたという。剣山にあるとされるソロモン王の秘宝については、拙ブログの「剣山に隠されたソロモン王の秘宝をめぐる怪しい人達(その1) - 神保町系オタオタ日記」、「剣山に隠されたソロモン王の秘宝をめぐる怪しい人達(その2) - 神保町系オタオタ日記」などで紹介したことがある。しかし、宮中という人物は知らなかった。
 撮影した西田氏は、『阿波の面魂(つらだましい):西田茂雄写真集』(西田茂雄、平成8年8月)で宮中を含む徳島出身者17人の面(つら)を紹介している。あらためて同書で12キロものハンマーで一人岩を砕いたり、『ヨハネ黙示録』を読む姿を見ると、宮中は時価20兆円*1といわれた秘宝が当初の目当てだったのだろうが、最後には毎日掘りに行くこと自体が生き甲斐だったのではないかという気がしてくる。
 さて、宮中をソロモンの秘宝発掘に駆り立てた古本とは何だろうか。候補としては、2冊ある*2

山本英輔『真理の光』(千代田書院、昭和26年2月初版・27年6月再版)
高根正教『四国剣山千古の謎:世界平和の鍵ここにあり』(四国剣山顕彰学会、昭和27年9月)

 高根著には、四国と黙示録との関係、剣山に契約の櫃が埋蔵されていること、昭和11年7月以降の剣山実地調査の経緯などが記載されている。ただ、非売品で昭和27年9月発行なので、同年中に古書店に出る可能性は零ではないが、低そうである。
 一方の山本著は、昭和26年2月の初版時には善行会から非売品として刊行されるも、27年6月再版時には千代田書院から市販された。378頁もある本のうちソロモン王の秘宝に触れているのは、「附録世界の三大謎」の「第二剣山の神秘」(372頁~376頁)だけである。ただ、高根や内田文吉により五色の粘土や多数の玉石、小ピラミッドなどが発掘されたことが記載され、「剣山発掘平面図」、「剣山発掘断面図」なども折り込まれていて、何かお宝が埋まっていそうと感じさせるものになっている。おそらく、宮中をソロモン王の秘宝発掘に駆り立てた古本は、山本著であっただろう。

 ちなみに、高根著は神保町の今は無きキントト文庫でン千円で買いました。

*1:三村三郎『ユダヤ問題と裏返して見た日本歴史』(日猶関係研究会、昭和28年8月)には、「時価八千億円の金塊」とある。

*2:3冊目として三村三郎『世界の謎:日本とイスラエル』(日猶関係研究会、昭和25年8月)を挙げようかと思ったが、ソロモン王の秘宝に言及していなかった。三村『ユダヤ問題と裏返して見た日本歴史』では言及している。