神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

剣山に隠されたソロモン王の秘宝をめぐる怪しい人達(その2)


戦前から剣山の発掘を行った高根正教や内田文吉については、その詳しい経歴が『特高月報』昭和15年10月分に記載されている。なぜ、特高月報に掲載されているかと言うと、昭和15年7月23日に不敬罪で検挙されているからだ。同月報によると、内田は、

四国剣山には 皇太神宮の御神宝埋蔵せられあるを以て之を発掘して 皇室に献上し奉らむとするものなりとの妄説を案出し、昭和十一年五月頃後記高根正教が五十音言霊及聖書等を研究して斯道に博識なるを聞知するや、其の所説と自己の妄説とを綜合附会して大要(一)三種の神器は本来六種の神器たるものにして未発見の神宝三種は四国の剣山に埋蔵せられあり、(二)神宮神域附近及剣山、其の他厳島竹生島、江之島等には古代の神宝、純金延棒等多量に埋蔵せられあり、(三)内田は古典伝説等を研究の結果之が所在及発掘の方法等を知悉し居れり、(四)内田の鉱山事業は実に敍上神宝の発掘を目的とせるものなり、との妄説を捏造し之を宣伝吹聴することに依り後援者、出資者を得ると共に、所有鉱区の騰貴を図り以て敍上の損失*1を回収せむとしたるものにして後述の不敬行為を敢行するに至れり。


また、高根については、

古事記に「二名の島、四つの面あり」とある二名とは四国に伊予、阿波、土佐、讃岐なる別名あるを指し「四つの面」とは四人を四つの国四国に立てるとの意なるが、更に聖書黙示録には「われ四人の天使地の四隅に立て」とありて、日本神道古事記、黙示録はいずれも四国と密接なる関係ありとなし爾来四国に関する研究に没頭するに至れり。


念のため言っておけば、上記はあくまで警察の決め付けた内容であって真相は不明としか言いようがない。それにしても、(その1)で書いたように昭和19年の段階で、元海軍大将までが剣山に秘宝を捜し求めているようでは、日本も戦争に負ける訳だなあと思ってしまうのであった。もっとも、高根らの説によると、失われた聖櫃(アーク)が剣山に隠されているそうだから、「インディ・ジョ-ンズ」ではないが、最終兵器(笑)として利用しようと考えたのかもしれないね。


追記:(その1)に登場した角(すみ)田清彦については、同一人物か不明だが、『右翼事典』によると、明治32年1月8日生まれ。宮崎県出身。明大、外国語学校ドイツ語専修科卒。昭和3年平野小剣、西村泰蔵等と内外更始倶楽部を結成、機関紙『革新時報』を発行。8年以来、内藤順太郎に従って数回にわたって台湾、支那福建省渡航。戦後“熊沢天皇”を擁して正皇党、南朝奉戴国民同盟等で活躍。

*1:「鉱山事業に染手して蒙りたる二万数千円の損失」があるとされる。