神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

[カフェー]東寺ガラクタ市で見つけたカフェー業界のゴシップ満載『紅燈新聞』(神戸市の紅燈新聞社)

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 『紅燈新聞』(紅燈新聞社)の16号(昭和8年8月25日)と22号(9年11月25日)は、4年前に東寺ガラクタ市で入手。2号合わせて100円だった。各4頁。喜び勇んで、ブックス・ヘリング、古書善行堂、文庫櫂にお見せしたっけ。こういうのを見慣れたベテラン文庫櫂では、「まとまっていれば、市会で値段は付きますが…」とあまり感心してくれなかった(^_^;)
 発行所の紅燈新聞社は神戸市上澤通7丁目に所在、編輯発行兼印刷人は久元勇治。写真をTwitterに挙げた時に、神戸市長の久元喜造氏と何か関係があるのだろうかという反応があった。詳しい経歴は、調べてみたが分からなかった。ただし、16号に主幹久元静浦はかつてカフエー福原会館のマネージャーだったが現在は違う旨の社告が出ているので、静浦が勇治の号とすると、福原会館の元マネージャーだったことになる。
 本誌は金沢文圃閣から『帝国日本雑誌新聞総カタログーー紙メディアの昭和戦前期1932年版ーー』として復刻された『全国新聞雑誌通信社名鑑』(全国新聞雑誌通信社聯盟、昭和7年12月)に『紅灯』として記載されていて、当初は紙名が微妙に違っていたようだ*1。また、「社長又ハ社主」も発行人と同じ久元だったことが分かる。ちなみに、同名鑑の兵庫県の部には、『紅街新聞』、『神戸紅街新聞』、『花街いろまち新聞』、『夜の神戸』なども載っていた。
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 本誌の記事は、写真に挙げたようなカフェー業界のゴシップが中心である。広告も神戸市のカフェー、酒場が多い。カフエー海洋軒、高級酒場赤風車、新進酒場マル、精養軒、カフエー福原会館、カフエーほまれ、カフエマツヤ、三洋喫茶店などである。このうち、「あやすーぃ雑誌『夜の神戸』の編集者山本周五郎と寺田新社長 - 神保町系オタオタ日記」でも利用した『創立十周年記念誌 附組合員名簿』(湊川西洋料理酒場喫茶業組合、昭和12年3月)で経営者が分かるものを記録しておこう。精養軒は林鯛一郎、福原会館は矢次宅蔵、マツヤは松本寅一、三洋は松村マツである。
 久元は、紅燈新聞社の他に神美社も経営していたと思われる。本誌16号に邦画雑誌『神美』2号の広告が載っていて、所在地は紅燈新聞社と同じである。また、社告として元青山写真館主任の永山久光が紅燈新聞社と神美社の写真部主任として入社した旨が記載されている。『神美』は「唯一の関西画壇展望誌」とあり、これも気になる雑誌である。昭和10年版名鑑に記載されているので、少なくとも1年は続いたことになる。
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*1:『紅灯』とする昭和7年版名鑑は同年10月末現在で、一方『紅燈新聞』は16号から月2回発行を逆算すると8年1月創刊となるので、『紅灯』を廃刊して『紅燈新聞』として再スタートした可能性がある。なお、国会図書館デジコレで見られる昭和10年版名鑑では『紅燈新聞』である。