神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

明治40年8月夷谷座で活動写真「祇園祭」を観る少年の日記

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 明治41年京都初の映画常設館である電気館で活動写真を観た青年の日記は、「明治41年京都初の映画常設館電気館で活動写真を観る青年の日記 - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。今回は、明治40年南座や夷谷座で活動写真を観た少年の日記にしよう。少年は、明治28年生まれで、第五高等小学校に通っていたが明治40年6月に退校している。日記の記述の多くは学校での授業の様子で、たまに娯楽や家庭での描写が混じる。また、しばしば挿絵が描かれているのが特徴である。書砦・梁山泊の島元さんからいただいた。
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 まずは、南座に関する記述から。写真をあげておく。「十二日モ商用ニテ休ミマシタ」とあり、続きは1月15日なので、同月13日か14日の日記ということになる。『近代歌舞伎年表京都篇5巻』(八木書店、平成11年3月)によると、南座では明治39年12月31日から40年1月16日まで横田商会の世界パック活動写真が上映された。『京都日出新聞』同月11日に「昨夜より桑港の大地震、滑稽汽車栗毛、婦人百面相、其他十数枚の新着写真を加へたる由」とあるらしい。日記には汽車の絵が描かれていて、記事中の「滑稽汽車栗毛」に当たるのかもしれない。
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 もう一つは、夷谷座である。こちらは、やや詳しい記述である。前記『近代歌舞伎年表』によると、8月1日から25日にかけて、横田商会の活動写真が上映された。京都日出新聞の記事で確認できる作品は、「アルプス山大探険、英国貴族の野猪狩、及びお伽芝居浮かれ閻魔など」(同紙7月31日)、「本日より左記の新写真を加へると。祇園祭、悲劇ピストル一発少女の胆略、盲人と愛犬の報恩、夜の海」(同紙8月6日)、「昨夜より世界一の海水浴場、諸芸大会、平和踊、乳母車、滑稽小児等の写真に替へた」(同紙8月15日)であるという。少年が観た作品は、「祇園祭」以外は『京都日出新聞』では確認できないものなので、貴重な記録になっている。