神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『静岡県印刷文化史』(静岡県印刷工業組合)を読む

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 12月14日(火)静岡市清水区の浜田生涯学習交流館で小二田誠二先生の講演「静岡印刷文化史」が開催されるとのこと。申込み受付中。詳しくは、「静岡印刷文化史[静岡市清水区]|アットエス」参照。お近くの人は是非行きましょう。
 その関係で、Twitterで『静岡県印刷文化史』(静岡県印刷工業組合、昭和42年11月)が話題になった。いつ買ったのか不明だが、私も持っている。目録注文だったと思う。ざっと読んでみると、「五 江戸時代平民文学と郷土の文人」中の「静岡県の俳壇史 駿府の時雨窓と六花庵其他」に贄川他石が出てきた。

贄川他石 (沼津市)駿東郡清水村の人。名は邦作。凌頂門。池上庵と号し、三世孤山堂を嗣いだ。日本名著全集の内の「芭蕉全集」「俳文俳句集」及び俳句講座中の「連句作法」「去来俳句新釈」「六花庵三代」「去来抄と三冊子」其他「真珠白珠」「寒稽古」「卯杖」「三陀羅尼」の著がある。県会議員や静岡県町村長会長も務め、実業家でもあったが、俳文学界の業績は専門家以上であった。昭和十年十二月没。行年六十八。

 これで、他石の俳人野田別天楼宛絵葉書を持っていることを思い出した。「俳人野田別天楼宛多田莎平の葉書を拾う - 神保町系オタオタ日記」で言及した別天楼宛絵葉書が出回っていた頃、入手したものである。大正11年8月4日の消印である。しかし、「一寸なりとも上京したく」の他は文面がさっぱり読めないので放置していたものである。各自判読してください。
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 『静岡県印刷文化史』は、「八 静岡県印刷出版文化史年表」も面白い。幾つか記述を引用すると、

明治一〇年 ◎静岡札ノ辻に新聞縦覧社[ママ]ができた。
明治四二年 ◎此ころ雑誌の発行が盛んになる。「ふた葉(小笠加茂村雑誌会)萩華(萩間村青年)同窓偶語「(朝比奈村青年会)。「堰南文芸(川崎 大石活版所)「榛原郡勧業時報(月刊同社)「茶業之友(月刊同社)」「榛原郡教育時報(年三回教育会)」
昭和二年 静岡文芸家連盟組織され会報創刊
昭和四年 静岡県政史話 静岡県編 刊行後回収して焼却

 明治42年の雑誌発行が盛んになるとかは、特に気になりますね。続く誌名が関係があるのかは不明である。あと、西ヶ谷潔らが『本道楽』*1を創刊した大正15年に「白隠と夜船閑話 野村瑞城」とある。この『白隠と夜船閑話』は、京都の日本心霊学会が発行したもので印刷も京都である。白隠静岡県ゆかりの人物なので、挙げているのだろう。他にも、静岡県で発行・印刷されていない本が含まれているかもしれない。
 静岡というと、何と言っても書物蔵氏が『文献継承』14号(金沢文圃閣、平成21年6月)の「古本界の重爆撃機!:『古本年鑑』と古典社の渡辺太郎附.年譜」で紹介した沼津の古典社が浮かぶ。しかし、年表に昭和5年創刊の『図書週報』や昭和8年から刊行が始まった『古本年鑑』などが含まれていないのは残念である。