神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

京都古書会館で『休暇日誌:尋常小学校第五学年』(金港堂書籍、明治44年)をー柿本真代「夏休みの日記の成立と展開」を使うー


 10月13日~15日に京都古書会館で「京都まちなか古本市」があるようだ。ということで、時期は不明だが京都古書会館で入手した『休暇日誌:尋常小学校第五学年』(金港堂書籍、明治44年6月)を紹介しよう。日記が好きなのと、金港堂発行なので購入したと思う。キクオ書店出品で、500円か1,000円。
 金港堂については、あらためて稲岡勝『明治出版史上の金港堂:社史のない出版社「史」の試み』(皓星社平成31年3月)を献本いただきありがとうございました。同書によれば、明治8年10月創業した金港堂は教科書専業から一般図書・雑誌へ営業方針を転換。明治35年3月創刊の『文芸界』など七大雑誌を発行するも転身は失敗に終わり、明治44年までにすべての雑誌を整理することになる。入手した日誌は、そのような金港堂をめぐる状況が激動した時期に発行されたことになる。
 表紙には単に「休暇日誌」とあるが、絵が示すように夏季休暇用の日誌ということになる。「夏季休暇日誌」については、田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史:日記文化から近現代日本を照射する』(文学通信、令和4年3月)の柿本真代「夏休みの日記の成立と展開ー『夏季休暇日誌』から『なつやすみの友』へ」に詳しい。柿本論文によれば、明治43年7月文部省普通学務局長から各地方長官へ出された「夏季の復習法等に関する通牒」が夏季休暇日誌の活用を加速したという。そして、金港堂発行の日誌として、明治42年発行の『休暇日誌』、『夏期休暇 女学生日誌』、『夏期休暇 小学生日誌』の3種をあげている。このうち、『休暇日誌:尋常小学第五学年生』の書影があがっていて、表紙の絵は異なるものの、続く「記入の心得」や「豊臣秀吉のおはなしをおかきなさい」は家蔵の物と同じである。柿本先生は京都華頂大学准教授なので、私同様京都の古書店で入手されたのだろうか。
 ところで、入手した日誌を書いた小学生は、不思議なことに夏季休暇が終わった9月9日から書き始め、10日、11日と続き、月日の記載はないが、4日目で終了している。三日坊主ならぬ四日坊主であった。