神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

奥田啓市鹿児島県立図書館長と全日本科学技術団体聯合会

柳田國男の年譜によると、柳田は、昭和11年4月28日鹿児島県立図書館で郷土資料を見学、5月1日には同図書館で講演している。これにより、柳田は当時館長だった奥田啓市と面識があったと思われる。奥田の経歴は、『簡約日本図書館先賢事典』によると、

奥田啓市 おくだけいいち 1880−19?? 2.1908/早大 3.1910/東京市日比谷図書館,長崎県立図書館,1921/鹿児島県立図書館館長,1944/退職

この鹿児島県立図書館長を退職した後の奥田らしい人物が、柳田の『炭焼日記』に出てくる。

昭和20年1月18日 奥田啓市君久々にて来る。技術団体聯合会にはたらくといふ。永井亀彦翁のことを話す。

「永井亀彦翁」は、昭和40年10月6日付読売新聞の訃報にある永井と思われる。記事を要約すると、

永井亀彦 エラブウナギ研究家 昭和40年10月5日、鹿児島県鹿児島市原良町の自宅で死去、87。鹿児島県出身。奄美大島沖永良部島の小学校の教諭をしながら、エラブウナギの生態研究をつづけ、卵生動物であることをつきとめ世界的に著名。

永井が鹿児島県人あることから、やはり「奥田啓市」は鹿児島県立図書館長だった奥田と見てよいだろう。
「技術団体聯合会」は、昭和15年8月に創設された全日本科学技術団体聯合会ではなかろうか。「科学及技術に関する関係団体を通じ、科学人及技術人の国民組織を結成して挙国一致の国策推進機関たらしめることに重点を置き、関係団体相互の連絡調整を図り、国策の遂行に寄与するを以て目的」とした団体である。元鹿児島県立図書館長の奥田は、昭和20年で数え66歳になるが、聯合会で何をしていたのだろうか。