神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

黒岩比佐子さんを偲ぶ社会主義研究者たち

黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)についての最後の書評になると思われる書評が、『初期社会主義研究』23号に出た。大岩川嫩「軽妙にそして骨太に闘い抜いた堺利彦の生涯を描く」である。そこには、

文体は端正であり、わずかな誤伝もあるが(例・古河力作の姪にあたる人を孫とするなど)全体の水準の高さはノンフィクション作品でありながらすぐれた研究書としても評価しうるものといえよう。大逆事件百年のいま、この好著を得たことを喜びとしたい。

とある。黒岩さんが目にすることができないのが残念である。
また、同誌の堀切利高「幻に終った講演会−−黒岩比佐子さん追悼」では、2010年11月3日福岡県京都郡みやこ町豊津で予定されていた「堺利彦先生生誕140年、大逆事件・売文社創設100年記念講演会」について、黒岩さんは友人のつきそいで、同日の朝の便で昼頃現地に入る予定だったのが、事態が急変したという。黒岩さんの堀切氏宛の10月21日付葉書が紹介されていて、

16日の東京堂書店での講演は、なんとかやりとげたものの、その後、急激に病状が悪化し、少しでも早く入院する、という選択をせざるをえませんでした。情けない話ですが、羽田空港へ行くだけでダウンしそうな状態です。

黒岩さんと堀切氏とは、堀切氏が『大正労働文学研究』3号に書いた荒川義英に関する論文(「荒川義英の生涯」)について、黒岩さんが電話で質問したのが、知り合うきっかけだったという。堀切氏が豊津に行くという黒岩さんに小正路氏を紹介、黒岩さんは翌朝豊津に向かったそうだ。

(参考)「発見された売文社の機関誌『パンとペン』創刊号
    「堺利彦と『平民日本史』の編集

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小谷野敦鈴木貞美論争の中に、森やうすけ氏の「新聞文學その他圈外文學への脱線--高須芳次郎(梅溪)の埋もれた文學史構想に關する覺え書き」『研究紀要』81号(日本大学文理学部人文科学研究所)が出ていたのだなあ。→「http://www.nichibun.ac.jp/~sadami/what's%20new/2011/koyano523.pdf」の7頁