黒岩比佐子『古書の森 逍遙』の書籍コード123は、『家庭料理講義録』第一号(東京割烹講習会、明治45年4月初版、同年7月三版)。「料理の通信教育のテキスト」ということだが、この十年前には同種のテキストが存在していたようだ。明治35年5月11日付読売新聞「よみうり抄」によると、
家庭割烹実習会 通信教授の方法を以て割烹実習を講じ質実に庖厨食物の改良を図らんとて今回神田佐久間町四丁目に設置されたる同会ハ六ケ月間の講習期限にして主任講師ハ日本割烹井上善兵衛氏西洋割烹宇野彌八郎の両氏なりと
岡野知十『俳諧風聞録』(白鳩社、明治35年12月)巻末の広告によると、『家庭割烹講義録』は、神田区佐久間町四丁目十六番地の家庭割烹実習会が作成し、第5巻まで既刊となっている。正科講師は井上善兵衛、宇野彌太郎。科外講師は赤堀峯翁、赤堀峯吉*1。赤堀峯翁は、初代赤堀峯吉で明治15年に日本で最初の料理学校を創設した人のようだ。岡野は、年譜によると、明治35年5月白鳩社より『家庭割烹講義録』を発行。同講義録に「割烹の実習」を発表。36年6月同講義録に「卓上小話」、「四月馬鹿」を発表。
また、書籍コード118双楓書楼同人編『名流百道楽』(博文館、明治44年6月)の岡野知十「会席付道楽」によると、
その後翁(故赤堀峯吉のこと−−引用者注)を中心に地方会の小会等を行りつゝボツボツ料理を稽古して見ると、却々面白い。日を経る儘に段々面白くなるに連れて妻をすゝめて行らせもし、終に家庭講義録の発行となつたのである。(略)今日では茶人料理の研究に入り、幾多の会席付を蒐集して、記録の上で研究しつゝ、喰つた積りになつて居るのが、何よりもの道楽である。
岡野は、講義録発行に際し、中心的役割を果たしたようにも読めるが、よくわからない。
実はこの岡野こそ、書籍コード144『秘密辞典』(千代田出版部、大正9年6月)の著者自笑軒主人の謎を解くキーマンではないかと思われる。
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月曜日発売の『Discover Japan』という雑誌に、むのたけじ氏へのインタビューが載っていた。黒岩さんが聞き手となった岩波新書も登場。しかし、「比沙子」となっている・・・
戦争絶滅へ、人間復活へ―九三歳・ジャーナリストの発言 (岩波新書)
- 作者: むのたけじ
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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今週の黒岩さんの書評は、筒井康隆『現代語裏辞典』(文藝春秋)。黒岩さんと筒井の組み合わせとは意外だが、黒岩さんには明治・大正期の各種辞典を収集して読むという趣味があって、辞典つながりである。『古書の森 逍遙』では紹介されている220冊のうち、7冊が辞典・辞書である。書評では、自笑軒主人『秘密辞典』にも触れていた。自笑軒主人の正体については、ただ今オタどんが追跡中。近々重大発表(?)があるかもしれない。
筒井の辞典では、芥川賞の立項はないが、直木賞について、「直木三十五なんて、誰か読んだことある?」とか書いていたと思う。
- 作者: 筒井 康隆
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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- 作者: 黒岩比佐子
- 出版社/メーカー: 工作舎
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