神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

三角寛以前のサンカ小説(その2)


サンカ文献の一つ、清水精一『大地に生きる』によると、

曽つて中村吉蔵さんが「無籍者」といふ脚本を書かれたものがあるが、これはポンスの一部を表はして居るものである。また、大朝、東朝の夕刊小説に「照る日曇る日」といふものが掲載されたことがある。それにはオゲ(山窩の一部)が表はれてゐる。あの小説の中に「釜仁」と「お銀」といふ人物を扱つてゐるが、それである。


「無籍者」は『婦女界』大正14年4月号掲載。大佛次郎の『照る日曇る日』は大正15年8月から昭和2年6月まで掲載。これも大正後期のサンカ小説ブームの例。
(その1)は6月27日参照。


(参考)『照る日曇る日』から引用。

お銀はその一味山窩の言う娑婆とは世界を異にする山の娘だった。山の掟は、昔から部外の人との交通を厳しく禁じている。叛く者は、仲間全体の敵として、たとえ首領であろうと親子夫婦であろうと、掟の定め、命を奪われても仕方ないことになっていた。


追記:白水社から観世榮夫著述/北川登園構成『華より幽へ 観世榮夫自伝』が今月刊行。


中央公論新社からはドナルド・キーンの自伝『私と20世紀のクロニクル』。索引から谷崎潤一郎関係の部分だけ拾い読みする。