神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

江見水蔭の時代小説が載った『旬刊写真報知』(大正14年)


 古書鎌田から『旬刊写真報知』3巻24号(報知新聞社出版部、大正14年8月25日)を購入。「江見水蔭のサンカ小説 - 神保町系オタオタ日記」でサンカ小説かもとした江見水蔭「丹那山の怪」が載っていたからである。しかし、残念ながらサンカ小説ではなく、時代小説であった。そもそも、『現代大衆文学全集』2巻(平凡社昭和3年2月)に収録されていたので、それを見れば分かることであった。リテラシーが低いですね(^_^;)
 同書の「口上」によれば、「諸家の記録を読んで、多大の感興を得た事実を基礎とし、或は古老の直話、土地の伝説などを参酌し、その不明の個処に自己の想像を加へ、更に自己の解釈を下した」作品で、発表順ではなく事件の年代順に並べたという。収録された39篇の初出を調べると『旬刊写真報知』のほか、『講談倶楽部』『文芸倶楽部』『面白倶楽部』などであった。『近代文学研究叢書』38巻(昭和女子大学近代文化研究所、昭和48年8月)の「著作年表」及び同39巻(同研究所、昭和49年3月)の「第三十八巻年表補遺」に記載のない作品も多い。江見自身も『明治文壇史:自己中心』(博文館、昭和2年10月)487頁で「其著作ーー小説及び脚本だけでも長短実に二千種を突破してゐる」と述べていて、網羅的な書誌を作成するのは相当大変そうである。しかし、江見の本格的な評伝と併せて、誰か挑戦しないかしら。

 入手した『旬刊写真報知』の目次を挙げておく。写真の部では「近づいた二科と院展」、本文の部では「幽霊を見た話」、光吉夏弥「近代舞踏家図考」などが載っていて、十分元は取れた。
 ところで、江見水蔭特集の『浪速書林古書目録』31号(浪速書林、平成13年6月)の生田敦夫「江見水蔭」によれば、父生田耕作と共に進めていたものの幻で終わった二つの企画があったという。一つは、〈絵本鏡花コレクション〉で泉鏡花の作品を初出の新聞・雑誌に掲載された口絵・挿絵と共に1冊に纏めるもの。もう一つが、〈忘れられた名作選集〉で、最初の配本予定が江見の『鏡と剣』であったという。企画書のファイルに言及しておられるが、今も残っているだろうか。