神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

お札博士スタールのトンデモ山脈(その9)


スタール博士も狩野亨吉も生涯独身であったが、「エルメスたんより古本!」と思っていたかどうか。スタールにはシアトルに妹がいて、その子供が戦後来日したようである。


「書物展望」(昭和25年8月)中の「木挽町たより」に、


故お札博士スタールの甥といふ人が牧師として来朝中とのことで、故人の旧友達にも逢ひたいとのことだが、横須賀の職場が離れ難いらしいので、今にその機会がない。


このスタールの甥について、詳細を知りたいものだが、ちと難しそう。


小島烏水「お札博士スタールの日本に対する警告」(『山谷放浪記』(昭和18年5月)、『小島烏水全集第12巻』所収)によれば、


彼はあまりに親日であつたために、又あまりに故国の政策を痛酷に批判したために、本国に於て殆んど凡ての友人を失ひ、彼自身の客中死までを早めるに至つた(後略)


という。スタールは、故国で失った友人の代わりに、日本では、トンデモない人脈や、古本ヲタの友人を得、また、第二の故郷とも言うべき日本に骨を埋めることができて、幸福だったかもしれない。