神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

昭和18年河井酔茗主催の文庫会に集まった誌友達

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河井酔茗主宰『女性時代』14年6号(女性時代社、昭和18年6月)が出てきた。神保町の水平書館の値札が貼ってあるので、東京古書会館の古本市で買ったようだ。32頁、800円。300円までで拾いたいところだが、相馬黒光「滴水日記」が載っているので購入。引用すると、

二月二十二日
(略)午後主婦之社の土井益子さん来り、静岡県の田中清一氏母堂につき聴きに来た。之は主人の領分なれば主人と対談する。(略)田中氏現代この戦時下に於ける最も良き意味での企業家であり成功者でもある。前橋の桑島翁より長芋の贈与あり。(略)

この「田中清一」は「平凡社創設者下中彌三郎の謎(その2)」で言及した竹内文献の関係者である富士製作所々長の田中だろう。同定の根拠はないが、国家主義者繋がりという直観。
『女性時代』は『日本近代文学大事典』によれば、

『女性時代』 文芸雑誌。昭和五年・一一~一九・三。(略)河井酔茗、島本久恵を中心に八十余名の社友を擁して出発した女性のための総合文芸雑誌(略)

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目次を写真であげておこう。醉茗の「松風」に文庫会に関する記述があった。

久々で「文庫会」を四月三十日日本閣で開催した。小嶋烏水、小牧暮潮、両氏にも相談し多少とも『文庫』の縁故ある方に案内した。(略)予期に反して出席者二十八人といふ盛会であつた。(略)
人見東明 芦谷芦村 小牧健夫 窪田空穂 佐野天声 本山荻舟 都河龍 鮫島大浪 白鳥省吾 川路柳虹 中山丙子 矢田挿雲 金田一京助 清水橘村 福島水月 安成二郎 大倉桃郎 日南田村人 森田草平 中村星湖 内田茜江 岡田道一 峰村国一 有本芳水 小島烏水 中山省三郞 河井酔茗 島本久恵(但し受付その他お手伝ひ)

島本は河井の妻で小説家、『女性時代』の編集を担当。中山丙子こと民俗学者中山太郎については、「中山太郎の出てくる小説」を参照。『文庫』は明治28年8月から43年8月まで発行され、河井は28年9月から40年4月まで詩欄を担当した。「誌友交際」は廃刊後も長く続いたのである。
(参考)「投書雑誌『文庫』の投書家群像