神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

昭和6年第三高等学校文科2年丙類のクラス雑誌『PANTAN』


 大量にある積ん読本を少しでもブログで紹介したいものである。しかし、昨今関西の古本まつりが増え、必然的に新たな積ん読本が増えるばかりで、昔からの積ん読本が益々埋もれていくばかりである。
 そんな状況の中、下鴨納涼古本まつりのためにおっさん2人が上洛した。積ん読本に囲まれた居間で寝てもらったら、森さんがある雑誌を発見。
 冒頭に写真を挙げた『PANTAN』4号である。「これは、なぜ買った?」と訊かれて、困ってしまった。目次を見ても、未知の執筆者ばかりで、タイトルも特に食指が動くものはない。おそらく、古本まつりで竹岡書店あたりの「3冊500円」台で3冊目に選んだのだろう。この雑誌を単独で買う理由は無さそうである。

 せっかくなので、どんな雑誌か調べてみた。謄写版の42頁で、奥付は無い。「編輯後記」に「神谷」が「クラス雑誌」と書いている。更に、寄稿の末尾に「六・七・一八」や「一九三一・十一・五」とあるのと、執筆者の多くが第三高等学校文科丙類の学生なので、昭和6年の年末頃発行された三高のクラス雑誌と思われる。昭和6年度時点で執筆者達は、2年生である。
 『第三高等学校一覧』で判明した執筆者の出身中学と卒業後の進路をまとめておこう。

藤岡幸四郎 京都三中 京大経済
今中五逸 京都桃山中 東大法
吉田唯雄 臼杵中 京大法
木村篤三*1 京都一中 東大文
吉澤絖之助*2 京都一中 東大文
藤谷總一郎 該当者なし。筆名?
神谷茂三 津中 東大法
宮本正義 和歌山中 京大文

 藤谷を除き、全員京大又は東大の卒業年(昭和11年~13年)も確認できた。帝大出の学士なら学士会の名簿に載っているだろうと、家蔵の『会員氏名録:昭和14年用』(学士会、昭和13年1月)を見てみた。ところが、大倉商事会社大阪支店に勤務する神谷しか記載がなかった。入退会は自由とはいえ、加入率が低いですね。ただし、木村は大学院在学中だし、宮本は卒業前なので、もう少し後の名簿を見れば、皆入会しているのかもしれない。
 裏見返しには「G.Imanaka」とサインがあり、旧蔵者は今中だったようだ。ググると裁判官を経て、弁護士になったようである。
 誌名の「PANTAN」は、パリ近郊の地名である。文科丙類はフランス語を第1外国語語とするクラスではあるが、なぜ「PANTAN」としたかは不明だ。

*1:一覧では「木村徳三」

*2:一覧では「吉澤孝之助」