神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

明治43年名古屋で開催された第10回関西府県連合共進会を見学した大分県師範学校?の修学旅行


 コロナ禍のせいで、なかなか神戸には行きづらくなっていたが、久しぶりに西代の古書店つのぶえへ行ってきた。キリスト教書専門店で、専門以外の雑誌・紙ものが安く出るので定期的に行きたい古書店である。
 今回は、明治43年4月6日と記された『旅行案内』を発見。日程表欄外に「本科第二学年修学旅行日程」とだけあって、どこの学校の修学旅行かは不明。ただ、出発も帰着も大分なので大分県の学校かと推測はできる。最初買うのは迷ったが、200円なので買ってみた。
 よくよく日程を見ると、4月20日に「名古屋共進会」を見物していて驚いた。というのも、『文献継承』39号(金沢文圃閣、令和4年2月)のアンケート特集で、明星大学の向後恵里子先生が明治43年名古屋鶴舞公園で開催された第10回関西府県連合共進会の地図やパンフレットなど紙もの一式を入手したと書いていて、関心があったからである。幼き日の江戸川乱歩稲垣足穂も訪れて旅順海戦館などを見たという。
 このアンケートを読んだ直後には、偶然にも『共進会案内』(名古屋経済会、明治43年3月)を京都古書会館の古本まつりで入手。京都スターブックス出品、1100円。3月16日の共進会開催前に『最新名古屋案内』の附録として刊行されたものである。旅順海戦館の紹介記事を挙げておく。

 更に、先月Twitterで@wogakuzuさんが、明治43年5月大津市から名古屋に行き共進会でサツキ人形を見たことを父親に書き送った葉書を紹介していた。これで共進会のことをあらためて思い出していたところであった。
 『旅行案内』に記された修学旅行の日程は、次のとおりである。

4月9日 大分港発
4月10日 宮島
4月11日~13日 京都・大津
4月14日~19日 鎌倉・横浜・東京・日光
4月20日~21日 名古屋・伊勢
4月22日~24日 奈良・大阪・神戸
4月25日 大分着

 2週間以上の、しかも年度始めという今では考えられない修学旅行の日程である。父兄の費用負担も大変だったのではないか。ただ、当時としてはこれ位の期間の修学旅行は普通だったようだ。大分県の「本科」ということで、大分県師範学校本科ではないかと調べてみると同校では2週間に渡る修学旅行が行われていた。
 それは、『大分県教育百年史第1巻通史編(1)』(大分県教育委員会、昭和51年3月)に大分県師範学校本科第1部第3学年の修学旅行として記載されていた。正確な時期は不明だが、明治末から大正期にかけてのもののようである。大阪、奈良、宇治山田、名古屋、鎌倉、東京、日光、足尾、長野、木曽、桃山、京都、神戸方面に2週間出かけたという。『旅行案内』に記載された訪問先や期間におおむね一致している。『旅行案内』に記載された「本科」は、大分県師範学校本科だった可能性は高そうである。