神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

玄洋社役員・社員の公職追放一覧ーー嵯峨隆『頭山満』(ちくま新書)への補足ーー


 一時期福岡市には出張で行くことが多く、帰りに福岡市美術館福岡県立美術館や古本屋の葦書房には必ず寄ったものである。しかし、玄洋社記念館に寄る機会がないまま同館は無くなったので、惜しいことをしたものである。
 さて、昨年10月ちくま新書から嵯峨隆『頭山満アジア主義者の実像』が刊行された。頭山が新書になるとは、良き時代ですね。本書や石瀧豊美『玄洋社:封印された実像』(海鳥社、平成22年10月)では、戦後超国家主義団体の一つとして玄洋社へ解散命令が出されたことには言及されている。しかし、玄洋社が昭和22年勅令第1号公職に関する就職禁止、退職等に関する勅令の施行に関する命令(昭和22年閣令内務省令第1号)別表第1第3号により時期の如何を問わず創立者・役員・理事等が公職追放の対象となる極端な国家主義的団体に指定され、多くの役員が公職追放になったことには言及されていない。そこで、石瀧著の「玄洋社社員名簿」を基に『公職追放に関する覚書該当者名簿』の復刻版(以下「名簿」という)から公職追放になった玄洋社の主な役員・社員の公職追放該当事項(玄洋社役員以外の該当事項を含む)を列挙してみた。

氏名   該当事項       地方別
緒方竹虎 国務相情報局総裁翰長 東京
香椎源太郎 東洋拓殖顧問 福岡
白石芳一 玄洋社監事評議員 福岡
進藤一馬 玄洋社理事社長東方会幹事 福岡
末永節 玄洋社理事 福岡
副田直規 玄洋社評議員 (空欄)
高場損蔵 武徳会理事銃剣道部長 福岡
土屋直幹 玄洋社理事 福岡
頭山泉 玄洋社理事 福岡
頭山秀三 著書天行会々長 東京
箱田達磨*1 玄洋社理事評議員 福岡
原口初太郎 正規陸軍将校 東京
広田弘毅 戦犯 神奈川
増永元也*2 玄洋社理事評議員 福岡
宮川五郎三郎 玄洋社理事 福岡
安川第五郎 玄洋社理事 東京
山内惣作 玄洋社理事監事 福岡
山座三郎 玄洋社理事 福岡
山崎和三郎 玄洋社理事相談役 福岡
吉田こくら*3 玄洋社理事相談役 福岡

 頭山自身は、昭和19年10月に亡くなっているので公職追放にはなっていない。戦後も健在であれば、「玄洋社創立者」として公職追放になっただろう。なお、「「『公職追放に関する覚書該当者名簿』のメディア関係者・文化人五十音順索引」が完成 - 神保町系オタオタ日記」で紹介したように出版・新聞・映画・放送・著書・陸海軍文官関係者の公職追放については、トム・リバーフィルド「『公職追放に関する覚書該当者名簿』のメディア関係者・文化人五十音順索引」『二級河川』17号(金腐川宴游会、平成29年4月)にまとめられていて、便利である。国家主義的団体役員の公職追放についても、このようなリストがあれば便利なので、研究者のどなたかにお願いしたいものである。

*1:名簿では「箱田達麿」

*2:名簿では「増永之也」

*3:「こくら」は「广」に「臾」。名簿では「吉田痩」