神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

中島俊郎「寿岳文章の和紙研究」を頂くーー国際シンポジウム「20世紀の和紙ーー寿岳文章 人と仕事ーー」公開中ーー

f:id:jyunku:20220405192437j:plain
 拙ブログの何割かは特定の人向けに書かれたネタで、12年前に亡くなられた黒岩比佐子さんがその一人だった。そして、黒岩さんに村井弦斎考案のタラ根湯薬のパッケージを贈ったのが、吉永進一さんである*1。パッケージは、吉永さんが藤枝ブックスで見つけたものだったと思う。吉永さん向けに書いた拙ブログの記事も多かった。しかし、その吉永さんも先月31日に亡くなられた。6年前病院に見舞いに来てくれと言われた時からこの日が来ることは覚悟はしていたものの、やはり別れはとても寂しい。亡くなった日は、頼まれていた原稿の締め切り日である。数日前に栗田英彦君に提出していたが、出していなければ訃報に接して「原稿を出してね」と言われた気分になっていたかもしれない。
 あらためて、吉永さんの御冥福をお祈りします。親しかったとはいえ、私には先輩・後輩の関係に過ぎない。御家族や横山茂雄さんらの親友には、とてもつらいことでしょう。吉永さんは、今頃井村宏次先生、川島昭夫先生、黒岩さんらと古本話をしているだろう。私もそのうち参加できるかもしれない。
 黒岩さんや川島先生と親しかった中島俊郎先生から、『甲南大学紀要 文学編』172号の抜刷「寿岳文章の和紙研究」をいただきました。ありがとうございます。昨年10月16日に開催された国際シンポジウム「20世紀の和紙ーー寿岳文章 人と仕事ーー」で中島先生が発表した「寿岳文章の生涯と和紙研究」では時間の制約上割愛された、寿岳が和紙研究を始める契機となった書誌学との関係、手漉紙の世界的研究者・実践者だったダード・ハンターとの交渉、『紙漉村旅日記』の意義などを分析・解明したものである。とくに同日記に関連して、寿岳が荷風の『断腸亭日乗』を「人に見せることを意図しており、そのソフィスティケーションが鼻につき、私は嫌いだ」と否定する一方、『高見順日記』を高く評価したことが紹介されていて、とても興味深かった。
 シンポジウムの内容は、向日市文化資料館のホームページ「催し物案内/京都府向日市ホームページ」から観ることができるので、ぜひ御覧ください。なお、『地方史研究』415号(岩田書院、令和4年2月)に家塚智子氏によるシンポジウム参加記が掲載されていた。
参考:「図録『寿岳文章 人と仕事 展』の刊行ーー向日市文化資料館で公開された向日庵資料の凄さーー - 神保町系オタオタ日記