神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

明治44年大阪大谷派本願寺別院内の伏見仏教青年会で開かれた近角常観の講話


 5月のみやこめっせの古本まつりで玉城文庫から買った紙ものは、もう1枚ある*1。大阪大谷派本願寺別院内の伏見仏教青年会で開かれる近角常観の講話の案内である。玉城文庫から500円で入手。伏見というと京都かと思ってしまうが、同別院は大阪市伏見町にあった。案内の文面を引用しておこう。

 親愛なる同胞諸兄姉に告ぐ
(略)世界的平和の宣伝者ジヨルダン博士来りて我国の平和に対する思想を研究せんとすと伝へらる。(略)恰良し現代宗教界の明星近角常観師の入洛を見る。我等は特に師の来錫を請ひ一場の講話を聞聴するの好機を得たり(略)
 明治四十四年九月廿七日
    伏見町字大阪大谷派本願寺別院内
         伏見仏教青年会
  ◎講話の時所
▲九月廿八日午後二時及び午後七時
(略)

 岩田文昭『近代仏教と青年:近角常観とその時代』(岩波書店平成26年8月)の「近角常観略年譜」によれば、この頃の近角は、

一九〇八(明治四一)年
 三月二九日、長男の文常誕生。(略)
一九一五年(大正四)年
 一一月三〇日、求道会館(設計は武田五一)の落慶式。以後、日曜講話は会館で実施。

 より詳しい明治44年の状況は、近角が明治37年2月に創刊した雑誌『求道』(きゅうどう)を見てみよう。「近角常観研究資料サイト」でデータベース化されていて、便利である。同誌8巻3号(求道発行所、明治44年6月)に「本年夏期伝道日割」が載っている。これに、東京の求道会と地方伝道の日程が載っていて、明治44年6月ら9月にかけて、前橋市大日本仏教青年会や呉市仏教青年会などで講話が予定されていたことがわかる。しかし、記載は9月8日までであった。9月28日に伏見仏教青年会で講話があったかどうかは、『中外日報』あたりを見る必要があるか。
 なお、案内の冒頭に出てくる「ジヨルダン博士」は、スタンフォード大学総長のデイビッド・スター・ジョーダン博士で、明治44年8月に来日し大隈重信邸で開催された大日本平和協会で第1回平和演説をしたほか、9月21日には入洛し同志社大学などで演説している*2
 

*1:みやこめっせで買った別の紙ものについては、「アントニン・レーモンド設計星商業学校新講堂の落成記念品附大売出しチラシ - 神保町系オタオタ日記」参照

*2:『日米年鑑』第8(日米新聞社、明治45年1月)の「四十四年日米関係史」による。