神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

金関丈夫、中村直勝、湯浅八郎らが創設した京都民芸同好会の民芸品展覧会

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 『民芸品展覧会目録(第四回)』(京都民芸同好会、昭和11年8月)が出てきた。あきつ書店300円の値札が貼ってあるので、東京古書会館まど展で買ったのだろう。大丸百貨店で開催された第4回民芸品展覧会の目録である。「本会の主旨」に挙がっている会員名は、次の9名である。

金関丈夫
菅吉暉
鈴木庸輔
中村直勝
深瀬基寛
松尾巌
山田保治
湯浅八郎
小野直養

 金関丈夫や湯浅八郎の名前があるので、買ったのだろう。京都民芸同好会については、中村の「京都の民芸同好」『淡交』増刊号第17号,昭和40年6月に書かれていた。

 昭和八年四月十五・十六日京都大丸百貨店で三一六点の民芸品を陳列して、世人の鑑賞を求め、われわれの研鑽を問うて見た。このとき京都民芸同好会を組織した。金関丈夫、菅吉暉、鈴木庸輔、中村直勝、山田保治、湯浅八郎の六名が同人であった。のちに小野直義、深瀬基寛、松尾巌が加わり(略)

 第2回以降の開催日と出陳点数をまとめると、

第2回 昭和9年7月21日・22日 220点
第3回 昭和10年7月19日~21日 206点 
第4回 昭和11年8月21日~23日 157点
第5回 昭和12年7月23日~25日 75点

 会場は、いずれも京都大丸百貨店であった。第1回~第4回までの目録は、京都学・歴彩館が所蔵。第5回の目録は、確認できない。
 会員の経歴は、金関は台北帝国大学医学部教授。菅は、大正3年京都帝国大学法科大学政治学科卒業後、朝鮮銀行調査局勤務。その後は、愛媛県に住んでいたが職業不詳。『民芸』415号,昭和62年7月の「愛媛民芸館開館20周年記念の行事 講演会、祝賀会、世界の民芸展」によると、昭和42年大原総一郎の提唱により完成した愛媛民芸館の当初の館蔵品は、京都民芸同好会同人で地元出身の収集家だった菅の所蔵品を譲り受けたものだという。
 鈴木は、明治27年生まれで島津製作所常務。中村は、第三高等学校教授兼京都帝国大学文学部助教授。深瀬は、第三高等学校教授。松尾は、京都帝国大学医学部教授。山田は、京都帝国大学農学部助手。湯浅は、同志社総長。
 小野がよく分からない。金関『文芸博物誌』(法政大学出版局、昭和53年3月)の「芭蕉自筆『笈の小文』稿本の断簡」に、「京都市在住の義弟小野直養君」とある。また、稿本は先考鈴蔵の遺愛品ともあるので、小野鈴蔵の息子ということになる。
 金関は、その後昭和16年7月台湾で『民俗台湾』を創刊。戦後日本に引き揚げるが、託されて村岡伊平治自伝の原本を日本に運ぶことになる。