神保町系オタオタ日記

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慶應義塾図書館で「(西洋)文字景ーー慶應義塾図書館所蔵西洋貴重書にみる書体と活字」開催中ーー慶應義塾ミュージアム・コモンズ「交景:クロス・スケープ」の関連展示ーー

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 慶應義塾ミュージアム・コモンズ(Keio Museum Commons | 慶應義塾ミュージアム・コモンズ)のグランド・オープン記念企画「交景:クロス・スケープ」の一環として、6月18日(金)まで「文字景ーーセンチュリー赤尾コレクションの名品にみる文と象」と「集景ーー集う景色:慶應義塾所蔵文化財より」開催中。要予約。フライヤーは持っている。これに関連展示として、慶應義塾図書館で「(西洋)文字景ーー慶應義塾図書館所蔵西洋貴重書にみる書体と活字」((西洋)文字景―慶應義塾図書館所蔵西洋貴重書にみる書体と活字 | Keio Object Hub: 慶應義塾のアート&カルチャーを発信するポータルサイト)が5月29日(土)まで開催中とある。こちらも予約制である。
 同図書館の展示は割と見に行っていて、図録も充実しているので、本来なら見に行きたいところである。しかし、何分の御時世なので諦めていたら、図録を御恵投いただきました。ありがとうございます。内容は、

第1部 文字のかたちとマテリアリティ
 I:羊皮紙以前ーーさまざまな支持体
 Ⅱ:中世写本の書体
 Ⅲ:初期活字の美
第2部 文字のなかの風景ーー「物語イニシャル」のナラティブ
 I:写本
 Ⅱ:印刷本

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 第1部は、エジプトの人型棺の上蓋を形成するパネルに書かれたヒエログリフ(紀元前600年頃)や青銅板に刻まれたローマ帝国軍人の退役証明書(160年)から始まり、9世紀新約聖書の『ローマの信徒への手紙』がラテン語で書かれた羊皮紙の断片などを経て、フランスのドミニコ会士ヴァンサン・ド・ボーヴェ『自然の鑑』(1476年)に至る。
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 第2部は、物語イニシャルとグロテスク欄外装飾に注目した『詩篇唱集(1250-1300年頃)から始まり、古事好事家、聖職者、出版者、法律家などが執筆・編纂にかかわったラファエル・ホリンシェッド編纂『イングランドスコットランドアイルランド年代年代記』第2版(1587年)などに至る。慶應義塾ミュージアム・コモンズの方が日本の文字文化を対象とした展示であるのに対し、図書館の方は西洋の文字文化に焦点を当てたものになる。
 お堅い本ばかりではなく、元ケンブリッジ大学キングズ・コレッジ図書館長で書誌学者のマンビー博士(1913-74)が書字の歴史を講義する時に使ったシュメールの粘土製円錐など30点が収まる「珍品キャビネット」や書誌学者フィリップ・ギャスケル(1926-2001)旧蔵書で「書物破壊者(又は書物愛好家)」による初期刊本・中世写本から挿絵と頭文字を切り取ったスクラップブックなど、古本マニアを驚かすような資料も出てくる。お近くの方は、ぜひのぞいてみましょう。
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