神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

名所旧跡の写真をバコバコ買う明治初期の写真コレクター斎藤月岑

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 明治初期の日記は、まだ江戸時代の延長の感じがあって、私の好きな人物や事物が登場しないのであまり読んでいない。しかし、たまにはと言うことで『斎藤月岑日記』10(岩波書店平成28年3月)を読んでみた。明治7・8年の日記である。印象に残るのは、戸長を辞めた明治8年は毎日のように「写真」や「写真絵」を買っていることである。たとえば、

(明治八年八月)
六日(略)虎の門へ参る、三省堂にて写真五枚、山王丁にて二枚買、楠公社・妙国寺・柳しま・一石橋・八百枩のうしろ・宮島・日光滝也(略)
七日(略)淡路町にて写真二買、浮御堂・ナホレヲン葬式図也(略)

 三省堂は同年12月1日にも出てくるが、著名な三省堂書店明治14年創業なので関係なさそうだ。斎藤は、店名と枚数だけでなく、写真の内容も記録している場合も多いので凄い記録だ。何枚持っていたのかと思ったら、

(明治八年八月)
八日(略)○写真四百四十八枚になる(略)

とあって、この時点では500枚ほど持っていたことが分かる。また、販売店の数も調べていた。

(明治八年十一月)
十八日(略)
○通新石丁・淡路丁・小川丁・九段下迄、写真絵売家廿三軒計に成る、

 『斎藤月岑日記』は貴重な史料だと思ったら、ネットで読める緒川直人「明治中期迄の写真舗顧客と写真蒐集家斎藤月岑ーー写真の大衆化の「受け手」論的一考察」『マス・コミュニケーション研究』82号,平成25年が既に活用していた。日記に出てくる写真舗について地域別に町名・名称をまとめたり、月岑が買った615枚の写真のうちタイトルが判明する278枚についてジャンル・タイトルをまとめてくれている。