神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

大正生命主義と宮本百合子ーーあったかもしれないムー大陸と宮本百合子ーー

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ヘッケル『宇宙の謎』(大正5年1月2日)
スターバック『宗教心理学』(大正5年1月7日)
メーテルリンク『死後は如何』(大正5年9月18日)
デゼルチス『心霊学講話』(大正5年9月8日購入[同月金銭出納簿])
加茂熊太郎『迷信と科学』(大正6年2月22日)
速水滉『現代の心理学』(大正6年4月16日)

 大正期の宮本百合子の日記に登場する大正生命主義的あるいはオカルト的な「本のリスト」を著者を補ってあげてみた。勿論、この手の本ばかり読んでいたわけではなく、大正教養主義に属する本、ロシア文学などの海外文学、日本の古典、同時代の漱石、花袋など、更には「ポーの短編集」、「『冒険世界』の探偵号」や『大菩薩峠』など、幅広く読んでいる。また、日記中からいかにも大正生命主義の時代を生きた百合子を表すような記述も拾ってみよう。

「宇宙の謎」を読んで「神は宇宙と一体なり」と云う言葉ではっきり神に対する考えを得た何よりうれしい。(大正5年1月8日)

乃木大将が愛子の幻を見られたことから見ると、或る霊感が距離の遠近に拘らずエーテルの震動によって、伝えられると云うことを信じられる。(大正5年8月28日)

春と秋の間に、夏のあることは、恐らく永劫不変だろうが、人間の生命などは、宇宙の大きなリズムの間に、小さくこまかに、複雑なリズムをそえて居るものなのだ。が、それでいい。大きなオーケストラの中で、こまかく響く、バイオリンの音は、小さくても大切なようなものだ。([(大正6年)二月の感想])

「現代の心理学」*をかなり進む。よく書いてあるとも思う。潜在意識と云うのを速水氏は、副意識とすると云って居られるがその方がたしかにいいに違いないように思われる。
 催眠状態に於ける人格的変化は非常に面白いと思う。(大正6年4月16日)

夜三沢さん*来、仏教の話をする。
華厳経のこと、大乗、小乗、寿量経、ボサツのこと。在家の居士。
ボサツ、生活形式は何をしてもよし、心さえボサツならばと。(大正14年11月25日)

編者注

「現代の心理学」ーー速水滉(一八七六年ー一九四三年)の著書。一九一四年刊。
三沢さんーー三沢智雄。当時駒沢大学にいた。

 さて、宮本百合子というと、皆さんはどういう人という印象だろうか。プロレタリア文学者、宮本顯治の妻、建築家中條精一郎の長女、湯浅芳子との関係などが浮かぶ人が多いだろう。私は、ムー大陸を提唱したチャーチワードの助手フローレンス・ウェルスの知り合いだったということである。既に、「宮本百合子とチャーチワードの女助手フローレンス・ウェルス - 神保町系オタオタ日記」などで紹介したが、百合子の日記にウェルスの名前がしばしば出てくる。自伝的小説『伸子』にも当初モデルとして登場する予定であった。ウェルスは、百合子と親しかった頃はまだチャーチワードの助手ではなかったと思われるものの、並行宇宙では百合子がムー大陸やキリストの墓の顕彰を進めていたかもしれない。
参考:「藤野七穂により解かれた『失われたムー大陸』中のキリスト日本渡来説の謎 - 神保町系オタオタ日記