神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

SF作家半村良とムー大陸

 仲小路彰ムー大陸を紹介した『上代太平洋圏』(世界創造社、昭和17年5月)を私が知ったのは、藤野七穂偽史と野望の陥没大陸“ムー大陸“の伝播と日本的受容」『歴史を変えた偽書 大事件に影響を与えた裏文書たち』(ジャパン・ミックス、平成8年6月)と思っていた。しかし、その前に半村良の文章で読んでいたようだ。「東南アジアの古代幻想」がそれで、初出は『東南アジア観光ニュース』22号、昭和51年のようだ。

ところで、私の手もとに、<上代太平洋圏>と言う書物がある。著者は仲小路彰という方で、発行所は世界創造社となっている。実はこれがそのチャーチワードのムー大陸説を日本で本格的に消化・紹介した出版物ではないかと思われる。発行の日付は昭和17年5月30日、つまり1942年で、チャーチワードの最初の本がアメリカで出版されてから、僅か3年あまりしかたっていない。当時の国際情勢から見ても、これは非常に早いものとしなければなるまい。

「僅か3年」というのは、誤り。チャーチワードの最初のムー大陸本は、1931年発行。半村は、この後ムー大陸を舞台に「太陽の世界」シリーズに取り組むことになる。