神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

谷崎潤一郎が頼りにした京都の古書店京阪書房

谷崎潤一郎命名した東一条の新刊書店春琴堂書店が3月末で閉店。さすが谷崎縁の店ということで谷崎のコーナーがあった。驚くことには、平成27年から29年にかけて刊行された『谷崎潤一郎全集』(中央公論新社)まで置いてあった。大書店でも置いてない方が多いのではないか。その全集の第26巻は、日記・記事・年譜・索引篇である。日記中には谷崎が訪ねた京都の古書店が出てくる。

(昭和三十三年)
八月二十日(水)
(略)高島屋百貨にマリちやんに贈るオモチヤを買ひに行き、「味覚」にて夕食を取り京阪書房を覗き公楽会談(ママ)に「炎上」を見に入り、つまらないので中途で出て来る(略)
十月三十一日(金)晴
(略)河原町丸善、京阪書房等に立寄り五時過帰宅(略)
(昭和三十五年)
五月廿九日(日)
(略)午後家人と二人街に出かけ(略)京阪書房に立寄り(略)近古史談をさがしてゐたところ京阪書房主人早速見つけて来てくれる、信玄の臣岩間大蔵の話も直ぐに見つかる(略)

今も三条河原町にある京阪書房ですな。ここは新刊の『日本古書通信』も置いてあって、時々買っています。また、均一台で拾えた件については、「均一パトロールで林若樹『集古随筆』を」参照。『京都書肆変遷史』(京都府書店商業組合、平成6年11月)から要約すると、

阪倉書房後、京阪書房
創業者:阪倉庄三郎
創業年:昭和12年以前
創業地:中京区河原町通三条上ル東側
創業者阪倉庄三郎は昭和の初め同郷(伊勢四日市)出身で親戚に当たる杉田長太郎(大学堂)を訪ね、25歳で入店。やがて独立して現在地に古書店阪倉書房を開店。
大学堂で修行中の常次を後継者にと昭和24年長女の婿養子に迎える。56年庄三郎80歳の没後、常次が直ちに二代目を継ぐ。しかし、62年71歳で逝去。その間43年同郷より三郎を婿養子に迎え継承して今日に至る。

京阪書房が、今も近くにある大学堂と親戚関係にあるとは知りませんでした。「阪倉書房」をいつ「京阪書房」に変更したかは不明だが、京阪書房という屋号は京都の阪倉の意味で、京阪電車とは関係がないとのこと。谷崎が一時期通った京阪書房。古本祭りには参加されないので馴染みの薄い人も多いかもしれないが、京都一の繁華街にあるので、一度のぞいてみてください。