神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

帝国図書館と美少年の妖しい関係

お盆は皆さん実家に帰るか、旅行に行くか、はたまた古本市に行く人ばかりかと思いきや、意外に国会図書館に行く人が多いらしい。地方から調査に行く研究者や学生だろうか。さて、国会図書館の前身の帝国図書館を若き日の荻原井泉水が利用していた。そこで、ある日美少年に出会ったようだ。『井泉水日記青春篇』上巻(筑摩書房、平成15年11月)によれば、

(明治三十四年)七月十八日 晴
(略)結果のわかるは午後よりなれば午前のうちは帝国図書館にbookwormとならむと思ひしが空合さだかならず、(略)家をいづ、九時ごろなり。馬車にて上野にいたり直ちに図書館に入る。予の占めたる椅子の斜め前には白がすりの筒袖をみぢかく着まだ肩上げのある美少年あり。十三四にや中学の二年位とみえ『博物示教』などいふ書を借出してよみをりたるがゆかしく又いはむかたなくうつくしきに思はず折々はながめつ。(略)一時半図書館を出で谷中のかたへ高等学校にいたらむとて歩をはこぶ。(略)

数え18歳の荻原にとって、この日は第一高等学校入学試験の合格発表の日で美少年に見とれている場合ではないと思うが、試験の結果はめでたく合格。一高の寮では岩波茂雄と同室となったという。
戦前図書館で出会った美少年ならぬ美少女をナンパするということはあったと思うが、今のところそのような記述のある日記には出会っていない。