神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

幻となった杉山茂丸の伝記と喜多川孝太郎

一又正雄著、大畑篤四郎編『杉山茂丸』(原書房、昭和50年10月)の「編者まえがき」に「杉山の伝記編纂の企図は戦前にもあったが、ついに日の目をみることなく終った(その原稿は今も福岡に保存されている)」とある。この戦前にあったという杉山の伝記編纂の話は、『真崎甚三郎日記』に出てくる。

昭和17年3月3日 喜多川孝太郎十三時に来訪、故杉山茂丸の秘書にして目下其の伝記編纂の任に当り資料蒐集の為なり。予は杉山と会せしこと三回のみに過ぎざる故別に知る処なかりしも、第一回の陸相官邸にて同氏国家の外他意なきことを知り、第二回は義太夫会にて会し斯道の達人たるを知り其の趣旨に共鳴し、第三回は某所にて数人集まり翁は陸軍の結束に就て大に憂慮しありしことを説明せり。

秘書だという喜多川は、前掲一又の書に、

本書(杉山茂丸訳『盲目の翻訳』(国光印刷株式会社出版部、明治44年9月))は、友人の山口俊太郎といって、幼少のときからイギリスに育ったものが杉山に話した政治小説に興味を覚え、自分の会社の会計主任の喜多川孝太郎に原文を読ませ、山口から聞いて自分のものにした話風にしたものである。

と出てくるのだが、これ以上の経歴は不明である。