神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

紅玉堂主人前田隆一

大正14年4月20日本郷燕楽軒で開かれた尾山篤二郎『草籠』出版記念会については、「関根喜太郎(荒川畔村)と北原放二」(8月24日)に書いたところであるが、出席者の一人である前田紅玉堂主人というのは、「雀隠れ日記」の「初秋」(http://d.hatena.ne.jp/yukunoki-a/20110827/p1)によると、同書の発行者である紅玉堂の前田隆一であった。この前田の経歴を「人と事業」『日本出版大観』出版タイムス社、昭和5年10月*1から要約すると、

前田隆一 合資会社紅玉堂代表社員 
明治29年4月名古屋生/現住所本郷区森川町1
大正10年3月東雲堂を退いて独立創業。以来主として歌学書を出版。
旧主東雲堂は嘗て歌書の専門書肆として知られていた。然るに同店が小学全科詳解に力を傾注し、営業方針が一変されてから、旧主西村*2の諒解と後援の下に遺(ママ)鉢を継いでこの方面に販路を開拓した。
昭和2年個人経営を合資組織に改めた。
震災直後『震災実記』四巻を名古屋で印刷発行し*3、奇利を博すると共にその敏腕を称えられた。

紅玉堂は、『短歌雑誌』の頒布者でもある。また、ググったら、前田は、辻下淑子氏の叔父に当るようだ。

*1:金沢文圃閣から『出版・書籍商人物情報大観−昭和初期』として復刻。

*2:「東雲堂の西村陽吉と孫娘西村亜希子」(4月19日)参照。

*3:紅玉堂編輯局編『関東大震災実記』(紅玉堂書店、大正12年)と同内容か。